私とニトロ時速500キロ――「フルスロットル」論

 さて久しぶりの更新ということで、いくらかアクセルをゆるめにして文章を書きたいと思います……でも今回のテーマは『フルスロットル』です。

 1987年にタイトーより発売されたこのゲームは、後の大ヒットゲーム(だと思ってる)『タイトーチェイスH.Q.』の原型とでも言うべきゲームであると思われます。ストーリィなんてものはたぶんないので自分で作りましょう。私は実は数回しかやったことがありませんが、とにかくでっかい車の形をした筐体だったと思います。 (※1)
 まあ、内容に特別なところはありません。自車のモデルは、チェイスH.Q.ではポルシェ928でしたが、こちらではどうやらマツダのサバンナRX-7のようです。ただし、チラシを見るとロータリーエンジンではないので、何か別な車かもしれません。なお、他の車にぶつかるとスピンしますし、派手にぶつかると吹っ飛びます。
 で、これだけならば普通のレースゲームのようですが、このゲーム最強の特徴はやはり『ニトロ』という新フィーチャーでした。ローギアとハイギアしかないレバーについている銀色のボタン。走っている時にこれを「ポチッとな」と言って押すと、爆発的加速! あれよあれよという間に時速500キロ!! になってしまうのでありました(実際に出したことあるのは442キロ。カーブがあったりなんだりで、なかなか500キロは出せません……って、400キロオーバーでも十分すぎるぐらい速いのですが)。

 こういう、ギアレバーについた特殊装置って言うのはその後のタイトーのそれにも出てきますし、あとセガのやつにもでてきますよね。その場合『ターボ』となりますが、考えてみるとスイッチを押して作動させるものではないような気が……そう考えるとやはり、ニトロですね。ある意味ダイナマイト的なパワーといえそうです。エンジンごと爆発しそうですけど。
 
 ちなみにニトロは各ステージで使い切りが前提。というのもチェックポイントを通過すると、また一定数、補充されるのですね。だから失敗した時の立ち直りに、あるいはある程度コースを把握しているのであれば、ポイントを決めて。使わないのはもったいないのです。

 あと、このゲームの魅力というと、やはりVGMといいますか……要するに音楽ですね。私はステージ1の音楽しか聞いたことがないんですが、これが非常にチャッチャカしています。どれくらいチャッチャカしているかって言うと、『ホットチェイス』のステージ1と同じくらいチャッチャカしています。東のフルスロットル、西のホットチェイスというところでしょうか。何もそんなに急がなくても、と思いつつも背中を押されて走り出す……そんな気持ちにさせてくれるような曲です(どんな曲だ)。
 
 このゲームは、先ほども申しましたが私は実は数回くらいしかやったことがありません。それよりもむしろ『チェイスH.Q.』の方をよくやった記憶があります。じゃあなんでこのゲームを取り上げたのかというと、生まれて初めて『ニトロ』という言葉を、意味のある言葉として認識したという、他人にとっちゃあ至極どうでもいいことですが私にとっては記念碑的なゲームなんです。

 そして、それから時が流れ、家庭でもできるようになって……ようやく(09年5月27日)全面クリアしました。コンティニューはないので、すなわち1コインクリアです。
 
 一通りやってみて思ったのは、とにかくハイスピード、とにかくすごいゲームだなということでした。
 
 途中でコース分岐とか、赤いスポーツカーとか、もしかするとタイトー版・アウトランなのかな? と思いました。そのコースによって背景が移り変わるのもなかなか楽しい感じです。ただ、何せ妙に忙しい音楽と、忙しいゲーム内容もあいまって、景色を眺める余裕なんてほとんどありゃしないというのも事実です。

 で、とにかくそんな感じであっという間に走りきると、ギャギャッと車の先端をこちらに向けながら停止、中からサングラスを掛けたドライバーの男性が出てきます。そして無言でタバコに火をつけ、紫煙をくゆらせる……そのあとこちらに、「ご苦労さん」という意味なのか、パッパッとライトを点灯させたあと、時速60キロ(くらいだと思います)の安全運転でスタッフロールとなります。
 
 すごくシンプルなものです。その素っ気無さがいかにも昔のゲームっぽい感じであり、硬派な時代のタイトーっぽいものなのです。


 そういえば私は80年代からレースゲーム好きだったのですが、しかし『モナコGP』やら『ポールポジション』やらといったある意味ではまともなレースゲームというのは93年の『リッジレーサー』までやりませんでした。それよりもむしろ、ちょっとまともでないような、普通の道路を爆走するようなレースゲームばかりやってきた感があります。別にこれといったポリシーがあってそうしてきたわけではありませんが、ただ振り返るとそうだったかな、と。まあこれといって意味はありませんが。

 というわけで、とにかくクリアしたことが嬉しくて、ちょっと文章を書き直しました。いつもなら昔の記事はそのままに、新たにテキストを起こして……という風にしているのですが、今回はたくさんの人に「この」テキストをご覧いただいているということもあって、ここにちょこちょこっと手を加えて……ということにしました。
 
 最初にこの記事を書いた頃は、私も「頭文字D」にすっかりハマっていた時代だったので、この型のRX−7というと作中の人が乗っていた峠道走り屋系のイメージだったのですね。だから、それを意識した文章だったのですが、そのあたりは修正させていただきました。
 
 リアル系のレースゲームがちょっと探せばいくらでも出てくる今の時代にあって、本作は完全にレトロゲームの領域に入るものですから、当然、実車の操作感覚とは全然違います。だから、かえって難しいと感じたり、「つまらない」と感じてしまうところも、あるかもしれません。私も多分に、自分の思い出があるから、こんな記事を書くこともできるのでしょう。中立的なところから書くと、自分から体当たりしていくというすさまじいコンセプトで話題をさらい、21世紀に入って続編も出た『チェイスH.Q』の影、タイトー系レースゲームの夜明け前を感じられる? 一本なのです。ぜひ『タイトーメモリーズU』で遊んでみてください。   




(※1)  ……とかと思っていたら、なんだかこぢんまりした、かわいらしい車でしたね。記憶とは、かくも当てにならないものなのでしょうか。いや多分、そりゃ、私自身も小さかったからそう見えたのでしょう。うん、そうに違いない。

 


他のアーケードゲームについて見る 

それよりもっと戻る 




 




inserted by FC2 system