婆沙羅(VISCO)

私とネオ時代劇レボリューション
『婆沙羅』論





 「戦国無双」やら「信長の野望」やら、まあそんな感じのゲームばかりやっているのですが、 最近は「必ずしも、史実通りでなくてもいいのかな」という気がしてきました。

 武田も騎馬3千騎でズドドドッと他国を蹂躙すればいい。織田も鉄砲3千丁でズバババンとその騎馬軍団を壊滅させればいい。空を飛ぼうがビームを出そうが 武器がセミオートライフルだろうが剣玉だろうが「そういうもんだ」と思えればいい、と思うようになってきたのですね。

 で、そういったものを極端に推し進めたのがメガCDの「電忍アレスタ」でありまして、私はそのゲームで初めて時代物にはまってしまったので、以来ずっと 織田信長のファンです。ついでに言うと柴田勝家はあんなに髭ボーボーなイメージではないですし長宗我部元親はあんなに若くないし(wikipediaの画像そのまま) 島津と言えば貴久さんです。

 
 長いことこれを上回るネオ時代劇ゲームはないと思っていましたし、今でもそう思っていますが、ただ同じくらいか、もしかするとそれ以上? のゲームが2000年代 に突如現れました。

 それが、今回ご紹介する「婆沙羅」です。BASARAではなく婆沙羅です。BASARAなら会社の女の子がPCの壁紙をそっちの方に設定しているくらいなので、婦女子諸君の受けもよろしいのでしょうが、 今回はこのVISCO社から2000年にアーケードで発売された縦スクロールSTGの「婆沙羅」について。よく検索すれば攻略とかを書いておられる方もいらっしゃいますが、とりあえず。


 1.暗黒天下人・徳川家康


 慶五年、大阪城炎上。

 時の内大臣である徳川家康は豊臣氏の象徴である大阪城を落とし、最後の当主である秀頼公を亡き者とすることで、自らの天下を揺るぎないものとした。それは 徳川政権による暗黒の時代の始まりであった。

 しかしながら、この徳川の世をよしとしない者たちが、反旗を翻した。

 それぞれの思いを胸に秘め、いま戦いが始まろうとしていた。


 慶長5年というのは西暦で言うと1600年。つまり当ゲームにおいて内府家康公は関が原と大坂の陣をいっぺんに済ませ、一挙に天下を手中に収めたのでした。なので後藤又兵衛 なんかは黒田長政の配下武将として出てきます。また、私は今回このテキストを書くに当たって関が原の戦いについてアレコレ調べてみたのですが、いわゆる関が原でだけ戦ったのではなく、 関連した戦いが日本中いろいろなところで起こっていたのですね。

 詳細については後述しますが、家康に挑む3人のもののふ(ひとり、そうでもない人もいますが)に魂を込めて、最後の大逆転、徳川の天下をひっくり返しましょう。

 (なお先に申し上げますが、私は原哲夫・隆慶一郎両先生の作品「花の慶次」 「影武者 徳川家康」「SAKON」が大好きで、その次ぐらいに「無双」とかが来ます)


 真田幸村……平和を愛する若武者(28歳)。平和とともに正義を重んじるので、策を弄して豊臣氏を滅亡させた家康をよしとせず、これを討ち果たして「本当の平和」を求めて 戦う。

 ゲーム内では割と平均的な能力でそこそこ使えるし美形でかっこいいし弾消し(後述)は割と広いし、真田がお嫌いでなければこの方をどうぞ。やけに書くことが少ない のですが、特徴はない代わりに使い勝手はそこそこということでご了承ください。

 
 島 左近……信義に生きる老武者(55歳)。主君は言うまでもなく石田三成ですが、この世界では関が原ではなく大阪の陣に参じて秀頼公に殉じたことになっています。その義理で家康を 討つため、決死の覚悟で徳川軍団に立ち向かいます。

 墨炎は当ゲームでは乗り物の名前ですがとにかく攻撃力が高い典型的なパワータイプで、硬い敵が多いこのゲームではとかく爽快の 一言に尽きます。その分攻撃範囲が狭いので、スコア稼ぎには向いていませんが、結構ボスが強い当ゲームではかなり有利に進められます。銃弾は5発どころか1発でやられてしまいますし、お供の忍者もいませんが、意外と一番クリアしやすいキャラなのかもしれません。美形が好きなら真田ですが、オジサン好きならこの人!(そんな!?)


 雑賀孫市……まずこの人は武者ではありません。鉄砲を使った傭兵集団「雑賀衆」の頭領です。そして「おなご」です。まあ史実でも「孫市」というのは通称と言うか 自分で名乗った名前だから、15歳のこの小娘が名乗るのもいいかもしれませんが、私はどうにもなじめませんでした。今回書くのは、そのあたりがようやっとなじめる ようになったからです。

 何せ使ったことがないので、ほとんど公式ホームページの解説からの孫引きですが、いわゆる「幅広ショット」のようです。広範囲の敵に対応できる。その代わり威力が少なめ。 で、これにホーミング性能の高い扇子。コレ最強。……かどうかはともかく、まあ、そんな感じ。祖父である先代・雑賀孫市は藤堂高虎に討たれたことになっているので、今回はそれの 敵討ちついでに徳川の暗黒政権を覆すために参戦だって。

 
 2.正義を切り開く刃

 基本的には8方向レバー2ボタンで、左のボタンを叩くと弾が出ます。セミオートなのでバシバシと叩いていれば結構な量の弾が出ます。……もちろんこれも大事なの ですが、このゲームのキモがショットボタンをしばらく押しっぱなしにしていると発動する溜め撃ちです。溜め「斬り」かな。

 これは射程は割と短く、ボスとかを斬りつける際はかなり接近しないと当たりません。その代わり敵弾を消すことができるので、激しい攻撃を「斬り」抜けるのに重宝します。 もっとも、ある程度パターンをわかっておかないと、斬り終わった瞬間目の前に大量の敵弾をばら撒かれ、無念の憤死を遂げかねませんが。

 ところで敵を斬ったり破壊したりしていると、赤いクリスタルが出てきます。これは相手の血しぶきが結晶化したもので、今宵の虎徹が血に餓えておるわけではないのですが、 とにかくこれを取りつづけ、スコア下の赤いゲージが満タンになると各人の斬りが大幅にパワーアップ! 出てる時間も長いので半無敵状態でボス等々に大ダメージを与える ことが出来ます。「婆沙羅モード」というそうです。

 まあできるだけ温存して、ボスの激しい攻撃が始まったらそこにあわせて一気に発動! やられる前に一気に押しつぶせ! ってなもので使うのが一般的な発想ですが、一度に 何体も敵を斬るとその分スコアがアップするので、スコアを意識するのであれば当然敵がゾロゾロ出てくるところで発動させ、ごっそりスコアを稼ぐというのがたぶん上手な人の 理想的なプレイなのでしょう。ちなみにボスで使い切っても、斬ると少しずつクリスタルは出てくるので、がんばって粘れば何度でも発動させられます。


 で、そういうすばらしいシステムなので下手は下手なりにザクザク斬りたいと思うわけですが、パターンを読みきれていないために変なタイミングで近づき、斬ったはいいけど 斬り終わった瞬間に弾幕がドサッと出て、レバーを動かす暇もなくボン! とやられてしまうことが多発するわけで、つくづく難しい、そして面白いシステムだと思います。

 3.立ちはだかる猛将たち

 当ゲームでは「首級/論功行賞システム」を搭載しております。要するにちょっと硬い敵とかを破壊すると、武将の名前が出ます。名のある武将を討ち取るとあとで得点がプラスされるので、 ついつい功を焦って窮地に追い込まれることも少なくありません。ちなみに私も知っている後藤又兵衛殿は1面のちょっと硬いザコでした。

 そしてさらに名のある武将が登場すると顔グラフィック入りでちょっとしたカットインが入ります。まじめだったりスカしてたりと、当ゲーム独特の色付けがされていて、 ある意味ではこれが魅力の40パーセントぐらいと言っても過言ではありますまい。というかもう、コレを語りたくて今回このテキストを書いていると言っても。

 なお紹介の順番は、私は真田幸村でプレイするのがほとんどなので、同氏でプレイした場合になります。キャラクタによって順番が変わる「エスプレイド」システム なそうで、場合によっては伊達政宗が先に来るかもしれません。


 まずは三河・上野の戦い。初めに出てくるもののふは黒田長政。

 「影武者・徳川家康」ではそこそこいい男に書かれていますが、こちらでは父親(黒田官兵衛、如水とも)の威光にコンプレックスを感じるちょっとヤサなところもある 色男といった感じで、護衛をゾロゾロ引き連れて斬りかかって来るのはご愛嬌。もしかすると本人は大丈夫だと 言っているものの、先代から仕えている老臣とかが心配して兵を出してきたのかもしれません。

「貴様らの相手など私ひとりで十分だ!

 そのあと出てくるステージボスは井伊直政/榊原康政。徳川十六神将で、なおかつ三人衆とも数えられる猛将ですね。当ゲームでもその伝説にふさわしく、貫禄と パワーを兼ね備えた魅力的なキャラクタとして描かれています。一応ヴィジュアル的には井伊が傷だらけの若武者で、榊原は髭面で不敵に笑っている老将といった感じです。

「内府様の御為……ここより先はお通しできませぬ。お覚悟を」(井伊)
「参る!」(榊原)





 次は伊勢・鳥羽沖の戦い。割と早い段階で有名な九鬼水軍の頭領・九鬼守隆が駆る潜水艦が現れます。

 若者は美形、壮年は色男、老将は渋めといったキャラクタの中でひとりだけ破壊的な顔をした海賊の頭領です。歯が全部とがっているのはどういうDNAの発現なのでしょう。いやそんなのは どうでもいい。とにかく武将というよりは、荒っぽくて男くさい方であります。

「来たな、こわっぱども! ここから先は通さん!」
 
 そのあと出てくるボスは、いわゆる信義とか、そういうものではなく「利」を見て徳川についた出世魚武将・藤堂高虎です。

 堅苦しいことが苦手で、酒が大好き。色眼鏡が妙に似合うお気に入りのキャラです。史実では城作りの名人であったと言いますが、当ゲームでは雷電か何かで見たことの あるような、長方形の砲台を甲板に敷き詰めた高速戦艦で襲ってくるので、「信長の野望」をやるまではずっと水軍の人なんだと思っていました。

「お館様を討とうなんて考えた
 アンタがいけないんだぜ……
 恨むなよ」



 次は大和・信貴山の戦い。ここは伊達の軍隊が駐留しているので、倒している雑魚敵の中には支倉常長とか伊達成実とかといった、仙台出身の方か信長の野望をある程度 やってる方なら「おっ」と思うようなキャラも多数でてきます。「あっ、今討ち取ったのはあいつだな」とかって字幕を読んでいるとむしろ弾幕に押しつぶされることが しばしばあるのですが。

 それはともかく、第一の将は鳥居元忠。徳川に仕える武将としては最古参のひとりで、見た目も三国志で言えば黄忠に相当するような老将of老将です。しかもただ歳を取っている だけではなく、誰よりも信義に厚く、誰よりも信頼されている(はず)、言ってみれば先述した藤堂高虎と正反対の人なのです。
 
 「殿に近づく不逞の輩め、成敗してくれるわ!」

 雪の振る中をさらに進撃すると、特徴的な三日月状のオブジェをつけた戦車が登場します。少なくとも奥州に居を構える犬神がこの前立てを見て想像するのは…… 言うまでもなく伊達「独眼竜」政宗公です。某「無双」ではバカめ! が口癖の小童でしたが、こちらでは28歳。若くて派手好きで快活な好青年なのです。まあ南部藩の一揆を 煽ったとかという事実もありますが、かっこいいから仕方がない。ちょっとタイミングは遅いのですが、それでも天下をあきらめていない、野望の数値も高めの猛者であります。

 「お前の強さは本物だな。
 だが、俺にも引けぬ理由(わけ)がある。
 行くぞ!」



 といった3ステージを攻略すると、次からは固定パターンで出てきます。

 最初に出てくるのは真田六文銭砲台を備えた空中戦艦から出撃する人型決戦兵器(違う)に乗った真田幸村の兄・真田信幸です。ちなみに奥様は本田忠勝の娘であらせられる、 通称「稲姫」ですね。出番はありませんが。

 手にしているビームサーベルは強力無比で、見てから避けることは絶対に不可能であり、婆沙羅モードであっても一刀のもとに斬られます。ヒントは「右利き」である、ということ ですが……?

 ちなみに史実では、どちらかというと内政において手腕を発揮した人物とされ、しかも弟が伝説的な扱いをされてゲームになるわ講談になるわと大評判なこともあって、あんまりパッとしないような 扱いですが、稲姫とのお見合いの時に無礼な態度を取る彼女を一喝したという伝説もありますし、ひとかどの人物であったことは間違いないでしょう。そもそもこの方が徳川について、長生きしたのだから、 真田の血筋は絶えずに残ったのですしね。

 とはいえ、プレイヤーが幸村であった場合、兄弟で刃を交えなければならないのはまことにつらいことと察します。どちらかが生き延びれば、血統は絶えないとはいえ……

  「己の理想に殉じるのもまた武士道……御免!」(通常時)
 「」(幸村とのバトルの際)

 そしてラストに控えるのは、史実でも古今独歩、最近では大塚明夫さんの声で「武で語れ!」と語って蜻蛉切をブンブン振り回す本多忠勝様であります。当ゲームでは 蜻蛉切の代わりに鹿角脇立兜(一等級・統率+10)をモチーフにした大型飛行機で容赦ない攻撃を仕掛けてきます。さらに蜻蛉切は持っていないと言ったばかりなのですが、 それに相当するレーザーを発射してきます。これは溜め斬りだろうとバサラモードだろうと一切容赦しない、当ゲーム最強? の攻撃なので、必然的に溜め斬りで通常弾を 打ち消しつつ攻撃を加えることになります。

   我らの前に立ちふさがるのなら容赦はせん! 覚悟せい!

 
 さらに戦場は美濃の大垣城へと移ります。私はこのあたりの地理に疎くて、一体どう進撃しているのか、そろそろよくわからなくなっているのですが、ともかくお城です。

 このお城には、ひとりしか武将がいません。もしも酒井氏が生きていればこの辺りも変わったのでしょうが、ともかくここでは剣術師範で、隆慶一郎先生と原哲夫先生によって ものすごい悪人にされてしまった柳生新陰流の使い手・柳生宗矩です。

 「影武者徳川家康」や「SAKON」で見せたようなどす黒さはありませんが(当たり前だ)、こちらではそういう思慮深さの代わりに天才肌でちょっとアブナイ性格の人になっています。公式ホームページによれば 主人公たちだけではなく徳川家康にも 私怨を抱いていると言います。そのためある条件を満たすと仲間になり、自分を重用してくれる秀忠を天下人にするために一緒に家康を討ちに行くことになります(大嘘)。

「我が剣にかかれることを、光栄に思え!」(1回目)
「貴様の剣は目障りだ 消えてなくなるがいい!」(2回目)



 そして柳生新陰流を破ると、舞台は再び関が原へ。大阪の陣が終わっているので、結構な年月が経っているはずなのですが、いまだ西軍の残骸があちこちに散らばっている絶望的な状況。ですがもはや 立ちはだかる武将は誰もいません。残るは暗黒天下人・徳川家康! 今こそ真田日本一の兵(つはもの)なり、というアレを見せ付けてやりましょう! 真田以外でも!!

    3.総論

 スコアアタックについては永久パターンがあるそうですし、そもそも私自身がそこまでパターンを組んでいるわけではないのでコメントは差し控えさせていただきますが、 要所要所でタメ撃ちを使っていけば結構バキバキ進めるかなりの快作であると思います。また(仮想)戦国ものとしても、かなりのレベルではないでしょうか。特に「野望」とか「無双」とか、あとアルファベットの方の婆沙羅とかと比べて、 「俺(私)の幸村はこんなんじゃない!」とか「島左近違いすぎ!」とか言うのもまた一興。
 
 ちなみに「2」ではヴィジュアルのある武将が大幅に増量! しております。時代はちょっとさかのぼって本能寺の辺りで、本能寺と言えば当然ラスボスはアノ人ですね。ちなみに 『野望』のアレと違って、こちらでは月代を剃っている、ほら、教科書に載ってる……長興寺にあるあの肖像画をもとにデザインされています。

 あとは藤堂高虎など、今作で出てきた人も何人か出ていますし、今回は敵味方にひとりずつ「名前だけ史実の人から持ってきた」女性キャラがいます。そして例によって、 既存のイメージをグラニュー糖よりも粉々にしてしまったトンデモ武将がゾロゾロ登場します。又佐殿……どうしちゃったんでしょう。

 ただ、何せ私は電忍アレスタで白牙忍軍としての洗礼を受けているので、わざわざ主君を討つためにプレイなどするもんか、とそっぽを向いているうちに、あっという間にゲーセンから 消えてしまったので、いまだにどんなゲームなのかよくわかりません。もしやる機会があったら……その時は、ね。  






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