私と幕末における士道の在り方について
――「風雲 新撰組」論




 ……と、精一杯難しい言葉を持ってきましたが、要するにPS2版のゲームについてのレビューです。2004年のゲームなので、割合に新しい方ではあるのですが、とにもかくにも今ものすごくはまっているのでね。

  今は新撰組といえばせいぜい新撰組リアンぐらいであって、むしろ世間的にクローズアップされているのは新撰組に目のカタキにされた維新志士・坂本竜馬の方だとは思いますが、最近このゲームの攻略本を買って熟読しまくったことにより、トントントンとゲームを進められるようになりました。

 そうすると、このゲームの奥深さ、重厚さにすっかり魅了されてしまいました。

 ブログの方で書いているプレイ日記と重複する部分もあるかとは思いますが、最近あまりきちんとした記事を更新していないので、とにかくひとつのコラムにしたいと思います。

  
  新撰組興亡体験ゲーム 


 このゲームは架空の新人隊士として新撰組以前の壬生浪士組に入隊したプレイヤーが、歴史上の様々な出来事の立会い者、というか実行者になって激動の幕末期を生き抜くアクションゲームです。

 ここで重要なのは、架空の人物はプレイヤー(と遊郭で時々接待してくれる女郎)だけであって、他はすべて実在の人物であるということ。そして時流の中で起こる出来事もすべて実際に起こったことばかりだということです。『維新の嵐』のように佐幕エンドというのはなく、どんなに維新志士を斬ろうと重要人物(桂小五郎、大久保利通、西郷隆盛……など)は最後まで生き残るので大政奉還、そして鳥羽・伏見の戦いへ突入……となります。

 そういうわけで、実際の歴史を少し調べればこのあと何が起こるのか、そして誰が入って誰が抜けるのかというのがわかるわけで……どれだけ不逞浪士を斬ろうとも京の街は焼けてしまうし、伊東甲子太郎が入るし、その代わり山南さんはいなくなってしまうし、薩長同盟は成立するし……

 もうね、何のために剣を振るうのか、わからなくなってしまうのですね。

 まあ、そんな感じで、自分が剣を振るう理由を必死で探しながらプレイするのも、ひとつの楽しみなのでしょう。たぶん坂本竜馬の方が、やってることは正しいと思うのですが、それでも新撰組に籍を置く以上、主君は徳川将軍。だとすれば、それに殉じるのが武士道と言うものか。……とかってね。


 ちなみに私の場合は……主君がどうこうというよりも、浪士組時代からいる古参の人たちがすごく好きだから。隊全体としての主義思想とかは変わってしまっても、天然理心流トリオ(近藤、土方、沖田)や、武士というかヤ○○のような荒くれコンビ(永倉新八・原田佐之助)、それに「魁先生」こと藤堂平助さんなど、「この人たちと一緒にやりたい!」という気持ちがあるから、やっています(あくまでも『ゲームの中の』という前提ですが)。

  
  乱世を生き抜くために


 といっても、気持ちひとつで生き残れるほど幕末の乱世は甘くありません。

 確かに序盤であれば、ナニナニ無双のようにひたすら攻撃! 攻撃! 攻撃! の繰り返しでグサグサギャーってなもんで次々と勝ち進めるのですが、中盤以降は相手も防御をガッチリ固めてくるし、それどころかカウンター攻撃で逆にこちらに大ダメージを与えてきます。

 しかもこの時代は武士道が何とかと言いながら、とにかく相手を倒すためなら手段を選ばない実戦的な剣術が横行していて、倒れている相手には容赦なく刀を突き立ててくるので、2〜3回食らえばあっという間に絶命してしまいます。

 そのため重要なのが攻撃のほかに、相手の攻撃にあわせてタイミングよく防御ボタンを押して「受け」→「受け攻撃」……要するにカウンター攻撃を繰り出すこと。中盤以降の強敵には、これがメインとなります。

 最初、犬神は防御ボタンを押して「すぐに離して」いたので、なかなかタイミングを合わせられずザクザク斬られていたのですが、ある時これがどうやらボタンを押しっぱなしにしていてもOK(タイミングが合わなければ通常防御)だということに気づいたのですね。これで受けるダメージが大幅に減りました。

 もっとも、それくらいのレベルの相手だと敵も心得たもので、なかなか攻撃を仕掛けてきません。しかしながら、そんな時に役に立つのが「仕掛け」ボタンであって、これは防御していたり構えたまま様子を見ている敵にフェイントを仕掛けて、体勢を崩させる技で、相手が体勢を崩している間に攻撃すると4倍もの大ダメージを与えられます。

 まあ、もしもそのカウンター攻撃がうまくいかなくても、相手の攻撃を普通に防御すれば、若干の隙が相手に生まれるので、そこに素早い攻撃を加えるヒット&アウェイ作戦も有効と言えば有効なのですが……とりあえず1対1で向き合ったら、間合いを慎重に計りながら仕掛けを打ち、相手が隙を見せたら一気に大ダメージ! というパターンを物にできれば、坂本竜馬だろうと近藤局長だろうと必ず勝てます(どちらも、ものすごく強いですが……竜馬は非常に「らしい」攻撃もしてきますしね)。


 また、私は最初はあまり使わなかったのですが、刀ではなくて槍を持って戦うことも出来ます。

 刀よりも攻撃範囲が広いのは当然であり、しかも槍に対するカウンターを持っている敵が中盤くらいまではほとんどいないので、ほぼ一方的に攻撃して倒すことができるのですね。一応デメリットとしては間違って一般市民を斬ってしまう可能性が大きいのと、隠密任務には向いていないことがあるのですが、一般市民が出てこないような任務なら、絶大な威力を発揮します。

 
 剣術指南・目指せ中村主水!?


 基本的には既に書いたような「攻め」「受け」「仕掛け」の3種類がこのゲームの基本動作なのですが、そのバリエーションがものすごくたくさん設定されていて、それらは「流派」としてカテゴライズされているのですね。

 近藤さんが4代目として土方さん・沖田さんらが修める『天然理心流』、藤堂平助さんや坂本竜馬も皆伝の腕前を持つ『北辰一刀流』、序盤で実際的な剣術のチュートリアルをしてくれる永倉新八さんが振るう『神道無念流』、台詞の最初に必ず三点リーダ(「…行くか」など)がつく無口な男・斎藤一氏が得意とする『小野派一刀流』などなど……。

 これらの技は、その流派の使い手を自分の手で倒した時、または道場で仲間と手合わせをして一本取った時に身についていきます。……その際、こちらが相手の流派を装備していなくても取れるので、槍を使えば道場の仲間にはかなりの確率で勝てることでしょう。何かちょっとずるい気もしますが(笑)。

 まあ、ともかくそんな感じで次々に剣術を修めていくと、一部の流派ではそこでしか使えない『奥義』を身につけることができます。これはもう攻撃スピードも攻撃力も最強クラスで、一度身につければ終盤まで頼りになります。

 犬神がオススメしたい(というか今、実際に使っている)のは神道無念流の奥義『砂○○く○』と宝蔵院流槍術の奥義『○○り』、あとは専用奥義ではないものの、かなり強力なのが『白○○光剣』。これらの技に加えて、受け・仕掛けの技術をプレイヤーがある程度身につければ、そのまま終盤まで一気に進むことが可能となるでしょう。

 ……ああ、忘れるところでしたが、「目指せ中村主水」というのは、彼が複数の流派の皆伝者であるということからタイトルを取りました。あとは、時には身内さえ手にかけなければいけない非情さも、彼に学ばなければいけないのかもしれません。

  
  士道に生きる、士道を信じる、そして士道に殉じる


 とりあえず、そんなこんなでがんばって最後までクリアすることが出来たのですが……久々に、こんな長い時間かけてひとつのゲームに取り組んだなあ、というのが感想でした。

 もちろん体力値や攻撃力などのステータスアップによって、かなりゲームを有利に進めることができるのですが、それでもプレイヤー自身の能力が上がらないと中盤から終盤にかけてはまったく勝てなくなってしまいます。

 当初はあまり深く考えずにサクサクとストーリーを進めていったのでプレイヤーの操作技術が追いつかず、そのために挫折を味わう破目になったのですが、きちんと少しずつ努力すれば必ず身につきます。さすがに竜馬の太刀筋は超高速で大変ですが、それ以外の相手であれば極端な話「見てから防御ボタンを押す」→「受け攻撃発動!」ということができるようになります。

 しかしながら強くなって、そう簡単に負けないようになってくると、一体なんのために人を斬っているのか……少し疑問に思うことがありました。

 最初は京の町を恐怖に陥れる不逞浪士らを捕縛(出来ない場合は討伐)することが目的であったはずなのに、どれほど斬っても大勢は倒幕の方に傾き、時には思想を異にして脱退した仲間を手にかけなければならないことも。

 その頃にはもう大義も何もあったもんじゃありません。かといって人を斬ることに魅せられるわけでもないし。

 ……そうすると、(ゲーム内で)自分を正当化する思想は、もはや『士道』という言葉しかないのですね。たぶん、きっと。

 
 日本と言う国を洗濯するためならば立場に関わらず「すかうと」を行い、士道も刀もいらないと言い切ってしまう坂本竜馬と、士道を貫き通すために刀を手放さない(ゲーム内の)私は、残念ながら絶対に手を結ぶことがないまま、その時を迎えることになってしまいます。歴史の教科書には絶対に載らない戦いの行方は……。

 ……でも、やっぱり、ちょっとうらやましいと思うのです。かっこいいと思うのです。やはり犬神はどこまで行っても竜馬大好きっ子なのです。
 

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