私と1996年のインベーダー(侵略者)
――「飛鳥&飛鳥」論





 このゲームは、なぜか『タイトーメモリーズ』にも収録されましたが、知る人ぞ知る怪作でした。

 どうして私がこのゲームのことについて書くのか。……正確には、2006年ごろ、書こうとしていたのか。それはたぶん、当時のタイトーのホームページにあった チラシを見て、『面白そう』と思ったからでしょう。……そして実際にやってみて、思わず天を仰いでジーザス! と叫びたくなるような内容に衝撃を受けたから でしょう。

 なので、あるいはこのまま復活させることなく永遠の眠りにつかせていた方が世のため人のためなのかもしれませんが、せっかくある程度の文章を作成していたので、 2011年の感覚で大幅に加筆修正し、とりあえずひとつの形にしたいと思います。


 漂白宇宙人 ギャラクシーハイター 登場!?


 1996年、地球はギャラクシーハイターの地球侵略が開始された。 ギャラクシーハイターは現代のみならず時空を超越して過去の地球にまで攻撃の手をのばそうとしていた。 彼らと対等に戦えるのは戦闘攻撃機「飛鳥」だけだった。(インストカードより)


 といったストーリィで始まる「飛鳥&飛鳥」は全4ステージの縦スクロール・シューティングゲームです。8方向レバー、2ボタン。 アイテムを取ってパワーアップして進んでいく非常にシンプルなつくりとなっております。

 絵がしょぼいとか音がしょぼいとかと巷間ではよく言われていますが、まあ……その通りですね。同年に東亜プランより発売された『TATSUJIN』があれほどまでに ド派手かつ爽快感爆発でありますから、『そういう時代だった』ではすまない何かがあるような気がします。

 ただし、私の場合はかえってその古ぼったい感じというか、いかにもタイトーっぽい雰囲気がたまらなく好きです。レトロフューチャー感覚というか、寂れた観光地の レストハウスの片隅にあるゲームというか、なんともいえない愛おしさを感じてしまうのです。たぶんこれほどまでに愛着を感じるのは世界で私ひとりぐらいだろうとは思いますが。


 プレイヤーに優しくないシステム、満載


 そんなこんなでゲームを開始します。ギュワーン……自機が飛び立ち、とりあえず前方にミサイルを発射しますが、画面の端っこまでは飛んでいってくれません。 そのくせ敵が結構硬くて、なおかつ快速ですっ飛んでくるやつらが多いので、なかなか緊張感の漂う戦いを強いられます。

 しかも、これはみんなが触れていることですが、ダメージを受けている時と爆発した時のグラフィックや効果音が同じなので、いつ敵を破壊できたのか少々わかりづらい という難点があります。ボズンボズンと響く低音はなかなかいいのですが、ゲームとしてはちょっとね……。


 あとは、コレも特徴的なのですが、左右のスクロールがちょっと唐突なんですよね。普通の縦スクロールシューティングなら、プレイヤーが少し左右に動けば早めに 左右に画面が動いて、敵がいてもある程度落ち着いて対処することが出来るのですが、このゲームはかなり近づかないとスクロールしない上、そのスピードが急なんですよね。 いきなりズイッ! と動くものだから、そこに敵がいたりするとボン! とやられてしまうんですよね。

 なので、基本的に画面をスクロールさせないよう狭い範囲の弾避けを心がけなければなりません。かなり大変ですが、それが妙に緊張感があるというか、なんと言うか…… それなりに何とかなるので、いいのかなって気がします。


飛鳥&飛鳥のあっちこっち時間旅行


 ストーリィ紹介でもあったように、敵のギャラクシーハイター(galaxy highter)は時空を越えてこの地球を侵略しようとしているので、こちらもタイムワープ機能を 備えた戦闘機『飛鳥』で出撃……となりますが……順番がよくわからないんですよね。

 ステージ1が1996年の日本(たぶん)だというのは、もちろん、わかります。地上物の大きさがちょっとオカシイというのはさておいて、とりあえず一番身近なところにいる 敵を撃退するのは当然でしょう。

 ステージ2は恐竜時代。いきなり火を吐くティラノサウルスなどを相手にすることになります。……これは、地球の歴史を調べ上げたギャラクシーハイターが恐竜の 圧倒的なガタイのよさに惹かれて、自分たちのテクノロジーで武器化してやろうと思った、ということでしょうか。だから、ステージ1の終盤で完全破壊できずに逃がしてしまった 飛鳥がそれを追いかけていった……と考えれば、わからなくもありません。

 ところが、ステージ3は……時代も場所もわかりません(笑)。顔砲台、目玉砲台、巨大ロボットの頭部、骸骨ロボットなど……最初はどこかの遺跡かな?  とも思ったのですが後半はメタリックな雰囲気になってきて……。

 ちなみにこの後半ですが、画面に映っていない部分からも遠慮なく弾が飛んできます(!)。現実的に考えればその通りなんですけど、この部分はやはり『究極タイガー』 などを見習っていただきたかったと思うのです。シューティングゲームのお約束でしょうが、と。

 ステージ4は第二次大戦期だそうです。確かにレシプロ戦闘機や戦車などがぞろぞろと出てきます。弾の量ももちろん大量です。

 それにしても最終面だから、といわれればそうなのかもしれませんが、途中に出てくる中ボスが異常に硬いんですよね。それでも画面スクロールはいつも通りだから、 まず破壊できません。

 そして、そんな敵たちをまとめる立場ですから、最終ボスの硬さは歴史に残るんじゃないでしょうか。なんというか、プレイヤーの精神力が途中で尽きてしまうんでは ないでしょうか。それも、怒涛の攻撃に押し切られてKO負けと言うよりも、「もういいや」っていう感じで(笑)。

 ともあれ、ステージ4のボスを倒し、いつものボーナスステージ(?)を通り過ぎると、エンディングです。ちゃんとあるんですね。


リアルタイムじゃないからこそ……


 この記事の最初に『レトロフューチャー感覚というか、寂れた観光地のレストハウスの片隅にあるゲームというか、なんともいえない愛おしさを感じてしまう』と 書きましたが、これっていうのはやはり私が21世紀に入ってからプレイしたから感じたことなんですよね。私自身ある程度の年齢を重ねて、そういったレトロフューチャー な世界に郷愁を感じるようになったこともあるでしょう。

 たぶん、当時ゲーセンで実際に100円玉を投入してこんな内容だったら、全然違う印象だったんじゃないでしょうか。「二度とやるか」とかって、そっぽを向いて それっきりだったかもしれません。

 もっとも、そういった大アマ評価をしたとしても、1988年と言う時代を考えたとしても……ゲームとしてはイマイチ、B級な感じは否めません。それは事実です。 家庭用に移植されたからプレイして楽しんでいるのであって、これに対して100円玉を何度も投入するかと言われると……たぶん、しません。それは正直に言います。

 結局、来るべき激動の90年代の直前にひっそりとリリースされた、タイトー夜明け前の作品のひとつ。そういった位置付けとして、なぜか心に残ってしまった一本なのでした。

 


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