「シルフィア」に関する再考を経たレヴュー
 
 ことわざ、というか慣用句というのか知りませんが、「あばたもえくぼ」という言葉があります。以前ファミコン通信という雑誌で連載されていた漫画の タイトルでもありますが、当時はなんのこっちゃ意味がわかりませんでしたが、今ではもちろんわかっているつもりです。要するにアレですよ、好きな ものであれば多少の欠点もむしろ美点に見えてしまうってことですよね。
 正直なところ『シルフィア』は、私にとってその典型でした。
 発売はトンキンハウスですが開発はコンパイルのこのゲーム、いくつか同社のゲームをやったことある人ならすぐにピンと来るようなシステムが いくつか採用されております(小さい何かを集めてパワーアップさせるシステムとか、サブウエポンがどこかそれっぽいとか)。コンパイルといえば 古くは『アレスタ』、最近は『ぷよぷよ』……も、もとい……PS版『ザナック』など、非常にいい感じのシューティングゲームを作る会社さんです。
 ……ですが、この『シルフィア』はちょっと違うというか、ちょっとシューティングゲームとしては首をかしげるような出来となっております。そのあたり のことについてはこちらのページに詳しいですので、 一度お読みください。
 しかしながら、だからといってこれはやはりダメ作品なのか?――と、まあ、やや冷静な気持ちで考え直して今回のレヴューをまとめる次第です。

 1.シューティングとしてちょっとつらい点について

 やはりシューティングに必要なのは『緊張感』と『爽快感』だと思うんです。それというのは、バリバリ弾を撃ちまくってボンボコ敵を破壊していくという、「撃たれる 前に撃て」というコンセプトのものであれ、最近流行? の、弾幕を必死でかわして攻撃する類のゲームであれ、このほど発売された「R-TYPE FINAL」などのような、 あるパターンにはめてクリアしていくゲームであれ、適度の緊張感とクリア時の爽快感を得られれば、たいてい「面白いゲーム」と認識できると思います。
 この『シルフィア』はその必要な緊張感と爽快感に欠いたゲーム内容となっております。自機の攻撃力が低く、見た目もどちらかっていうと地味で、 なかなか敵が破壊できないのがちょっとつらいですね。敵の攻撃もちょっと単調というか、一回かわすごとに血の気が引くような、そういう緊張を強いられない ものとなっております。
 いや、まあ敵が硬くてダメっていうんなら某「イーストアジア計画」社の一連のシューティングゲームなんかは軒並みダメってことになるんですけど そんなことはなく、下手ですが好きです。敵が硬いとこちらも熱くなって、一所懸命にボタン連打して右腕がつらくなる……そして1面もクリアできない けれどもなぜか気持ちは晴れ晴れ……ということもよくありました。――それって言うのは、やはり敵の方にもリアクションがあるからだと思うんですよね。 攻撃が当たれば光ったり音が出たりする。連続して撃てば連続して鳴る。壊れそうになったら点滅する。そして……ドカーン! やったぜおとうちゃん 明日はホームランだ! ってな気分になるんですよね。
 話がそれましたが、この『シルフィア』にはそういうのがないんですよね。しかも、徐々に装甲とか体の部位とかが(相手も大抵怪物であることが多い ので)壊れていくとかすればいいのにそんなこともなく……全然手応えを感じられないままとりあえず撃ちこみ、いいかげんめんどくさくなってきた頃 ボカスカと小さい爆発エフェクトを散らしながら消えていく……という、非常に地味な演出で、なんだか今一つ達成感が……。
 あのスターソルジャーの流れを汲む『ソルジャーブレイド』も若干物足りないような感じがしましたが、今にして思うとそんな感じがしました。一般に PCエンジン後期のSTGはこんなんばっかりだったと言いますが、そんなことまでは知りません。

 2.あばたもえくぼに見える理由

 ……というわけで、一般ユーザーからしてみれば「なんだか、やれんなあ」とかといった残念な評価を受けているこの『シルフィア』ですが、私は 依然として『シルフィア』が好きです。断固として好きです。何でかっていうと、そこにひとつの「世界」があるからです。
 一見、別にシューティングゲームに関係ない要素に思われますが、時としてこの「世界」、すなわち細かいストーリーとかなんとかというのは、犬神 にとってゲームシステムよりも大切だったりします。まあこれはシューティングに限らずともよいのですが、世界観のないゲームには入り込めず、結果、 「システムとしては面白いからやるけれど、どうも入り込めないんだよなあ」という、やはりなんとなく首をかしげるような印象しか得られないわけであります。
 『シルフィア』の世界――古代ギリシャの、神々の時代に起きた人類と天上の神々と冥界の者たちの戦いという設定は、ナムコの『フェリオス』ともども かなり好きな時代です。大学の講義でもギリシャ神話のこととなるとひときわ心ときめきました。実は大川隆法だかが作った「ヘルメス〜愛は風のごとく」 とかなんとかいう映画も見てその荒唐無稽さに失笑しつつも素直に楽しみました(宗教色は特にきつくありませんでしたよ、一応)。
 あと、主人公の少女が一度その、冥界からやって来た連中に倒されてしまうというオープニングも衝撃的でした。いきなり主人公が倒されてしまう とは。今思い出すと『源平討魔伝』の平景清なんかもそういったものかも知れませんが、それとこれとはまた違うので置いといて……。で、そのように して一度力尽きた少女が、天界のゼウスの力を借りてシルフィアとして転生して、人々を救うために完全と立ち上がった――と、まあ、そういったわけ でストーリーが始まるんですよね。
 願わくばもう少しステージごとにムービーがあったり、エンディングがもう少し筋の通ったと言うか、ストーリーにせっかくこちらが没入しているのです から、その気持ちをうまくまとめてくれるような、気の利いたエンディングであってほしかったと思います。まあそのあたりは、ある程度のカットさえあれば 犬神が脳内でどんどんバックストーリーを創作してテキストエディタでまとめているわけなんですけれどね。

 3.「で、結局どうなのよ『シルフィア』って?」

 結論。お薦めはしません。
 ……いきなりとんでもないことを言っているようですが、実際、薦められません。100人やって90人くらいは「なんだかなぁ」という顔をするか と思います。だから薦められません。
 ですが私は依然として『シルフィア』は大好きです。『フェリオス』よりも更に少し好きです。1回のプレイに所要する時間が結構長いので、それほど 気軽にやることは出来ませんし、やり始めても途中でほっぽり出したくなるような気持ちがすることもしばしばですが、それでもたまにやりますし、そう 言う気持ちになっても決して投げ出すことはありません。ひとつの神話を、その世界の者たちに思いを馳せながら読んで楽しむように、私もまた、 シルフィアの神話を、彼女に思いを馳せながら、ゲームをプレイすることでつむいでいるからです。

 犬神、よくゲームについて「音楽がいいから」とか「ストーリーがいいから」とかといってプレイすることがあります。そのあたりのつくりがしっかりして いれば、いい得点が出なくてもいい結果が出なくても一応の満足を得られ、同時にもう一度やろうという気持ちになれるからです。そういった感覚が あって、なおかつギリシャ神話が結構好きで、シルフィアがビジュアル的に嫌いでない方であれば、あるいは犬神と同じようにこのゲームを楽しめる かもしれない――そういうことにして、このコラムを閉じることといたしましょう。


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