私とハドソン流『シューティングの本質』
――『スターソルジャー バニシングアース』論




 実はこのゲーム、長いこと嫌いな部類に入っていました。……いや、嫌いとは違いますね。あえていえば「ない」。面白いとか、面白くないとか以前に、何も感じない。

 どうしてなのかといえば、まずストーリィになじみがないから。『スターソルジャー』と謳ってるから、当然自ら操縦するのは『シーザー』であり、相手はブレイン軍 だと思っていたのですが、説明書の解説によれば敵はゼオグラードとかいう連中で、以前に倒したラスボスの名前はデュオスコア3.3Cとか。

 そして自機の名前はF92ソルジャーブレイドとかいうもので、しかもボスを倒すと同時に大破、再起不能になったというから、『レイフォース』のエンディングみたいに なったのを想像します(『R−TYPE FINAL』でも)。まあ、実際どうだったのかは『ソルジャーブレイド』自体をプレイして確かめなければ、なんともいえませんが。

 ……とはいえ、これは「(私がかってに)スターソルジャーだと思ってたから、がっかりした」のであって、初めから『ソルジャーブレイド2』ってタイトルをつけてくれれば印象はまた違った ものになったでしょう。そうするとそもそも手にとることさえなかったかもしれないし、複雑なところです。

 まあ、それはそれでいいのです。逆に当時は知らなかった『ソルジャーブレイド』というゲームを知る機会になったのも事実ですし、「そういうもんだ」と思えば思える のですから。肝心なのはゲームの中身ですよ中身。


 1.「アレ」に似てる?


 ゲーム画面は斜め上から見下ろした「3D視点の縦スクロール」シューティングです。もちろん地上、空中のうちわけなんて小難しいことはなく、ショットボタンを 叩き続ければ画面上のありとあらゆる敵を破壊可能です。

 あとは通常のショットのほかにボムに相当する、数量制限のある超強力攻撃を発射することが出来るのですが、これについては押すボタンによって一点集中攻撃タイプと 全体攻撃タイプを使い分けることが出来ます。基本的にボス戦でいっぺんにダメージを与えることの出来る前者を多用することになるのかな、と私自身は思いました。

 さらにこのゲームではある操作をすることにより(説明書にやり方は書いています)、わずかな時間ながら完全無敵になるバリアを装備することが出来ます。前半は ともかく、後半はこれを使わないと絶対に切り抜けられないような、切れ目のないレーザーをボスが放ってくる場面があるので、何気に必須テクニックです。ただし一度 使うと0.6秒は使えないので、これだけ使っていれば安泰とはならないのが難しいところです。

 ……というのがおおよその内容なのですが、実際にプレイしてみると、たぶん多くの人があるゲームを想像すると思います。

 垂直に上がってきて90度向きを変えて飛んでくる地上物からの弾、画面全体に飛び散るレーザー、自機も敵機も撃ってくる極太ミュイイーン(と音が出る)レーザー、 そして2面のボス――空港の滑走路から離陸する巨大な全翼機……。

 そう、言い訳不能なほど『レイストーム』なのです。さすがの犬神もそこを突っ込まれると言い返せません。確かに先にこっちをプレイした人なら「あれって64版スターソルジャー そっくりだよね」と言うかもしれませんが、発売された年月日を考えればどうしても『レイストーム』が先ですし(『レイストーム』は96年、本作は98年)、これはもうどうしようもないでしょう。

 じゃあ、やっぱりダメなのかというと……そんなことはないのです。ここからが本題ですよ、本題。


 2.「アレ」とは違うのだよ、「アレ」とは!!!


 このゲームは『撃たれる前に撃つ』ことが基本理念なので、24時間ゲームプレイ中はずっと弾を撃ちまくることになるのですが、ご丁寧にその弾が何発当たったかヒット数を数えてくれます。 といってもそれは『首領蜂』っぽい、ある程度切れ間なく撃ち続ける必要があるのですが、恐ろしいことにレーザー系の武器は貫通している間もヒット数が増え続ける(っぽい)ので、そこらの ザコ敵に当てても数を稼ぐことが出来ます。

 そしてボス戦でも同じようにものすごい勢いで数字が上がるので、上手に立ち回れば1万ヒット以上というムチャクチャな数値をかなりイージーにたたき出すことが出来ます。

 ちなみに弾が多方向に飛ぶタイプの機体は当然コンボが途切れにくいのですが、すでに述べたようにレーザーの方が一気に数字が跳ね上がるので、やはりオススメは青い機体。ボス戦でも 『撃ちまくる』→『弱点(ダイヤモンドみたいなの)露出』→『レーザーボムで瞬殺』のパターンで進めます。ボム補給アイテムもホイホイ出てきますし、その方がヒット数も 跳ね上がるので、とても気持ちいいのです。

 今、そんな感じでひたすらコンボ数を稼いで……と申し上げましたが、そのためにこのゲームとそっくりな『レイストーム』(え?)などと違って、コンマ単位の緻密なパターンを組んで アアだコウだとやる必要はあんまりありません。そりゃ確かに突き詰めればパターンもあるのでしょうが、このゲームのいいところはあまり難しく考えなくてもそれだけの ヒット数、それだけの数字が出てくるということ。

 そして高得点はすぐに自機の量産(大量1UP)につながるので、初級〜中級モードなら常時ストックが最大になっていることも珍しくありません。他のゲームみたいに 「1機やられたからすべてご破算」というわけではなく、「1機やられたら、得点を稼いで3機増やせ」という、太っ腹なありがたいシステムなのです。


 3.個人的印象の変遷について


 実はこのレビューを書くために、何度か繰り返しプレイしていると、私の心境に少しずつ変化が出てきました。

 最初こそネット上で見た批判的な意見のイメージが頭につき、『レイストーム64(完成度80パーセント)』みたいな気分でプレイしていたのですが、やりこむほどに撃って撃って撃ちまくる 爽快感というか、ファミコンの『スターソルジャー』とかPCエンジンの『スーパースターソルジャー』『ファイナルソルジャー』にも通じる要素がきちんと実装されている ような気がしてきたのですね。

 シューティングについて、一時は得点を稼ぐこと自体に疑問を持ち、点数以外のものに楽しみを見出そうとしていた犬神ではありますが(『レイディアントシルバーガン』とか やってた頃)、こんなところで原点に立ち返らせられたようです。そう、 やっぱりシューティングは『シュート・アンド・デストロイ』なのです。

 そして今では、「むしろレイストームより面白いんじゃないの?」などと思えてきました。バカ言ってんじゃねえよ! と全国3千万のレイストーム信者の方に袋叩きに されかねませんが、単純大バカ三太郎の犬神はこっちの方が好きなんです。演出と世界観にホレたのは『レイストーム』ですけど、ゲームとして面白いのは断然コッチ。そして BGMについては正直なところどっちも大好きでたまらないのです。

 そういうわけで、見た目でガタガタおっしゃる方は100回やりこんでからもう一度来い! という高橋宣伝部長(当時)の声が今にも聞こえてきそうな名作(あえて断言します) 『スターソルジャー バニシングアース』。正直なところハードごと埋もれてしまった感じがしますが、当時のシューティングゲームが好きな方なら、結構楽しめるのではないでしょうか。


4.隠し要素等について


 ちなみにこのゲーム、隠し要素がいくつかあります。ここからはその解説? をさせていただきます。

 まず、2面でサイコロの「5」のように地上物が配置されている場所がありますが、ここで両脇の緑のものを先に破壊し、最後に赤いものを破壊すると、 ルートが分岐します。破壊の限りを尽くすことが出来るボーナスステージみたいなところに行くことができます。

 次は、ミッション3のスタートから少し先に進んだ所に現れる白い敵の編隊に混じって1体だけ現れる赤い敵だけを倒すことでルートが分岐します。ひとつ前の分岐が 『緑のものを全破壊→赤のものを破壊』なので勘違いしてしまいがちですが、これは赤いやつ「だけ」を倒すのですね。

 ……やり方としては、敵がいっせいに出てきても少し我慢して、白いやつがいなくなってから一気に破壊しましょう。 ただし時間が短いので、慣れないうちはレーザーボムなどで倒した方が確実です。ここはなつかし系なのかな? もしかしたら『ソルジャーブレイド』の世界とか、 なのかも。あまり詳しくわかりませんが、大きな隕石がゴロゴロ出てくるので、数千ヒットぐらいはあまり難しく考えなくても出てきます。


 そして最後はミッション4の中盤あたりで現れる白と赤の敵の編隊を、「赤の編隊だけ」全部倒します。これまた白い敵はしばらくすると逃げていくので、画面から いなくなったら一気に赤い敵だけ破壊しましょう。

 ここは私もよくわかります。ファミコン版のスターソルジャーをNintendo64の世界でリメイクしたものです。ラザロやデライラ、スターブレインマーク3や ビッグスターブレインマキシマムといったボスキャラも登場します。ここも結構コンボがつながりやすいのですが、そんなことよりもとにかく、ただただなじみのある キャラが出てくるだけで嬉しいのです(ステージタイトルもズバリ『追憶』)。元キャラバン戦士は刮目して見よ! なのです。そして感涙にむせびましょう。

 
 そしてこれは、難易度『マスター』(上級者向け)をクリアしたアカツキに送られる隠し要素なのですが、通常は秒間18連射のところを30連射まで引き上げることが できるようになります。その連射力のすさまじさたるや、1万ヒットもザラだというからたまらない。

 ところが、『ビギナー』『レギュラー』が割と爽快感重視の難易度なのに対し、『マスター』は地味に、しかしものすごく難しいのです。見た目はあんまり変わってないのに?

 たぶん、秘密は敵のゆっくりした敵弾。画面内に長くとどまるので、「弾を撃たれる→右にかわす→切り返す→まだ残っている弾に自分からぶつかる」という事態が多発 してしまうのです。もちろん適宜バリアを張って、弾を跳ね返してやればいいのですが、それをしょっちゅうやっていくのはなかなか難しく……そういうわけで私はもっぱら 『レギュラー』でやっています。


5.高橋利幸(宣伝部部長、当時)、魂の言葉


 最後に、ストーリィ解説や操作方法、さらには使用上の注意よりも……とまでは言いませんが、パラッとめくってすぐに掲載されている高橋利幸宣伝部部長(当時)のお言葉をどうぞ。より 説明書の雰囲気を再現するためにフォント、文字サイズの変更などをしています。


 どうしてシューティングって売れなくなったんだろう…。
 演出のハデさに偏ったものや、どれだけ敵の攻撃をよけられるかばかりを追求した物が多くなってきたよね。
 その辺に疑問を感じたんだけど、シューティングの本質は敵の攻撃より早くこっちの弾を打ち込むってことじゃないかな。(中略) シューティングの原点ってそこでしょう。だから「撃つ」ということに没頭できるゲームを作りたかったんだよね。(中略) 周りの背景すらも気にならないほど敵との対戦に集中できるようなゲームを作ってみたつもり。(後略)


 そう、これが98年当時のシューティングゲームに高橋宣伝部長(当時)が出したアンチテーゼなのです。ちなみに当時は『エスプレイド』『ライデンファイターズJET』 そして『レイクライシス』などが現役で、その少し前には『バトルガレッガ』『Gダライアス』などなど、まあ、そんな感じのゲームがありました。さあ、高橋宣伝部長(当時)が 嫌悪感を抱いているタイトルはどれだ! っていうか、どれもか!?(笑) 

 そして本作発売から10年以上が経ち、いまや肩書きが『名人』。ついでに言うと髪形も大分変わ……まあ、それはともかく、一時ほどの隆盛はないにしても、それなりに 一ジャンルとして生き残っているシューティングゲームの世界。残念ながら『スターソルジャー』シリーズ最新作では本編がなくて、オマケの2分/5分モードのみしか ないのですが……でも『雷電』シリーズのように、『いかに素早く相手を撃破するか』というのを重要なフィーチャーにしているゲームもありますしね。

 弾幕系シューティングに辟易してしまったかつてのキャラバン戦士たちは、本作をプレイして、「こういうスタンスでもいいんだ!」と自信を取り戻していただければと思います。 というかそれは私だ。うーん……。

 


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