私とネオジオ――もっとも身近なアーケードゲーム
第三回 謎の必殺技「餓狼拳」――「餓狼伝説」及び
第四回 超時空世界英雄格闘大会――「ワールドヒーローズ」




 普通の人々がご家庭でFFだのドラクエだのをやっていた頃、アーケードゲームばかりやりまくっていた犬神は常々回りの人たちの会話についていけず、お寒い思いをしたものですが、考えてみればそのドラクエだのが流行った頃(ここではとりあえずIIIあたりの頃)私たちの年代は小学生でしたから、そうそうゲーセンに足を運ぶこともできないわけですよね。本来は。
 それでも私は少ないチャンスを生かしてアーケードゲームに熱心になったものですが、こちらから足を運ばなくても向こうからゲーム機がやってきた日が来ました。いうなれば「ネオジオがやってきた、ヤー!ヤー!ヤー!」とでも言ったところでしょうか。いわゆるMVSというやつですね。
 大人が二人並ぶとちょっとはみ出すような割合こじんまりした機械に、ゲームが4つ。基本的には100円で2クレジット。ちょっとした個人商店の店先が一躍ゲーセンと相成った瞬間であり、私たちは家に帰るなりすぐに100円玉を握り締めて家を飛び出しました。
 でもって近所の小学生が初めて見るその「奇妙な箱」に興味しんしん丸な中、たぶん初めてコインを入れたのが私でした。そして選んだゲームは「餓狼伝説」でした。


 今でこそ格闘ゲームといえばインストカードみたいなのがあって、それでもって必殺技の出し方はすべて把握できるものですが、当時はゲームを進めていくとひとつひとつ教えてくれると言うものでした。しかしながら4つある必殺技のうち1つはインストカードにでも書かれているからなのか、掲載されていませんでした。テリーの「バーンナックル」、アンディの「斬影拳」、ジョーの「スラッシュキック」ですね。
 加えて私のところにあったその筐体には、そんな親切なインストカードなどないものだから、それはもう「謎の必殺技」であり、「出せること自体がステイタス」でありました。
 で、タイトルにもなっている「餓狼拳」ですが……いわゆる空耳です。斬影拳です。「ザンエーーケン!」と言っているのでしょうが、どうも聞き取れず、まして先述したようにインストカードなんてないものだから、「たぶんこういう名前じゃないだろか」とかという推論を友人同士で戦わせていたものでした。ちなみに「餓狼拳」の根拠は「そう聞こえるから」+「ゲームのタイトルが餓狼伝説だから」という、説得力があるような、ないような、いかにも小学生らしい? 理屈でしたとさ。
 
 ところで当時、私は「波動拳が出せない」人間でありました。というかまあ、ずいぶん長いことあのコマンド必殺技と言うのが苦手で、ストIIにしてもそういう理由からアメリカ軍人とか相撲取りとか野獣とかを使っていました。左にためて右とパンチ! とか、ひたすらボタン連射! とかで技が出るから。
 そういうわけで、最初こそ「主人公っぽいし、一番かっこいいから」テリーを使用したものの、すぐにボタン連射で必殺技が出るジョーを使うようになりました。また、似たような考えを持った人々がいたのか、私の地区ではジョー人気がかなり高かったように思います。……もっとも、後に斬影拳の強さと、バキと郭春成との戦いよろしく、見た目は色物だけど技の破壊力は抜群なライデンを二秒で遠い世界へいざなった大技を持つアンディ・ボガードの強さが認められるにつれ、彼の人気も高まりましたが。
 
 

 ところで、もうひとつ、それはそれで妙な人気を誇っていた格闘ゲームがありました。かつて怪作「ニンジャコンバット」を作り出したアルファ電子が贈る『ワールドヒーローズ』でした。そしてこれは、片手で数えるくらいしかない「1コインクリアした格闘ゲーム」なのです。
 「最強とは誰か?」
 そんな、格闘オタクみたいなことを思ったとある博士がタイムマシーンを使って、世界各地および各時代からヒーロー・ヒロインを呼びつけて戦わせようと言う史上例を見ないとてつもなくゴージャスな企画です。一体この博士は何様なんだ、という疑問をさておき、プレイヤーは8人の英雄からひとりを選びます。
すなわちADKが大好きなあんまり、あるいは全然忍んでない忍者・服部半蔵&風魔小太郎、世界中で大人気なオルレアンの少女ジャンヌ・ダルク、澁澤龍彦の「妖人奇人館」にも取り上げられた折り紙つきの怪僧ラスプーチン、それにハルク・ホーガン似のマッスルパワー、ブルース・リー似の金龍(キム・ドラゴンと読む。微妙に半島の人っぽい)、そして誰似なんだかわからないけど腕が伸びたりミサイルが飛び出したりする「我がドイツのォォォォォ科学力はァァァァァ世界一ィィィィィ!」な人、ブロッケンの8人です。この後半の人たちはモデルとなった人たちはいるでしょうが、現実に名のある人は前半4人だけですよね。
 動きは、今日びのチャッチャカした格闘ゲームに比べてすごくゆっくりな感じがいたします。なんかふわ〜んって感じで飛んで、バキッ!とかガコッ!とかと、ものすごく重くて痛そうな一撃を与える。そんな感じのゲームです。なお極端な話、投げ専用ボタンを連打していれば最後までいけるという驚異の攻略法もあるので、技を繰り出すのが苦手な方でも運がよければ勝てます。私のジャンヌ・ダルクはそれでエンディングまで行きました。
 このゲームは、初めてエンディングまでたどり着いた格闘ゲームでした。すでに辺りは夕闇が迫り、人気もないなか、ひとり黙々とゲームに没頭していた犬神。次々と他国他時代の英雄たちを倒し、白林寺の打岩よりもさらに特殊なオブジェを作り出すボーナスステージの打岩を経て、液体金属でさまざまな英雄たちの姿にメタモルフォーゼする宇宙生命体を倒し……これまで幾度となく涙を飲んで途中敗退してきたくやしさがいっぺんに帳消しになった瞬間でした。
 その後、今作は2が出てJETが出てパーフェクトというものまで出ました。回を重ねるごとに出るわ出るわ、強力な英雄たち。柔道少女も切り裂き魔も三国志の奸雄も、さらには某スタンド使いと同名の人とか(こちらは時を止める技はなかったはずですが)黒くて巨大な馬に乗って現われる世紀末覇王によく似た人とか、たぶん格闘ゲーム史上もっとも見栄えするキャラクタの集大成といえるのではないでしょうか。

 さて、駆け足で見てきたネオジオ格闘ゲームの話でしたが、たぶん、格闘ゲームの話はもうこれからはあんまり出ないんじゃないかなと思います。というのも、ほら、こういうのは他にもっとすばらしいサイトがたくさんあるし、私自身もあんまり格闘ゲームって得意じゃないし……。まあ、そんなこんなで、これは初めて遊んだ格闘ゲーム、そしてMVSのゲームだったってことです。
 
 次回からは割と本来の流れに戻ります。いや支流がそっちこっちに分岐していて、何が本来の流れなのかわかりませんが、次回取り上げるのはR-TYPEのスタッフが作ったR-TYPEっぽい横スクロールSTG「ラストリゾート」です。ためろパワー! とばせユニット!
 ……シンプルですね、どうもね。

 


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