巫女萌え礼賛主義の見直しについて
―『奇々怪界』に絡めて―


 ……いえね、別に犬神がこのゲームについてわざわざ書かなくともいいんじゃないかと言う気はしているんです。こう、ぐーぐるなりなんなりで探せばいくらでも出てくるでしょうし、萌えたイラストもたくさんあるでしょう。巫女萌えとかというのが顕著に出てきている今日びであればなおさらでしょう。
 でもあえて書きます。犬神の記憶の整理のためです。かつて家に氾濫するファミコンゲームの説明書の束の中にあったこの説明書の表紙の少女が長いこと記憶の海の底に沈みこんでいて、時々そこから泡が浮かび上がってくるような思いがず〜っとあったからです。その気持ちと向かうために犬神は『謎の黒マント』を買い、『あどばんす』を買い、あまつさえPC版のそれをも買ってしまったわけですが、どこかで自機(巫女)に萌えている自分に納得のいかないような部分がありました。
 

 で、そんな感じで今まで過ごしてきていたのですが、先日ぐーぐるをしていた時にFOXさんという方が経営しているHPを見ました。こちらは『奇々怪界』シリーズ最高傑作と言われる『謎の黒マント』を中心に丁寧な攻略情報を提供してくださっている方で、犬神もお世話になりました。そしてこのFOXさんのサイトを見たことが、直接的なきっかけとなったと言えるでしょう。
 ……さて、せっかくヒートアップした心が冷めないうちに言いたいことを言ってしまうことにしましょう。鉄は熱いうちに打て、と言う言葉もあることですしね(ちょっと違うか)。


    



←1987年8月28日発売『奇々怪界 怒涛編』説明書表扉。
 クリックすると、とてつもなくでかい画像を見られます。






 そう……すべてはこの説明書を見つけた時が始まりでした。
 当時ディスクシステムでプレイしていたゲームと言えば『ゴルフ』とか、そういった平和なゲームばかりであったのに、ふと説明書の山の中からぱさっと落ちたこの説明書。

おどろおどろしいロゴ、ろうそくを二本まきつけて微笑む少女――その姿はまるで『八つ墓村』の如きでございました。(注・当時の犬神ヴィジョン)。

 確か、当時は再びこの説明書を束の中に突っ込み、出来るだけ見ないように――特にも夜、ひとりで見ることは絶対にしないように心がけていました。何かのゲームのコマーシャルみたいですが、本当に犬神は長いこと恐怖していました。
「一度やってみれば、そんな恐怖も消え去るんではないか」「説明書読めばどんなものかわかろうに」などとおっしゃる向きもあるかもしれませんが、犬神は、先ほども言ったように怖くてたまらないので可能な限り手をつけることもしませんでしたし、その時には既に家に残存するディスクの中には、『奇々怪界』の入ったディスクはありませんでした。
 そんなわけで、もうそのことは忘れていたつもりだったのですが、ある時、以下のような画像(当時はファミコン通信の紹介記事)を見ることがありました。
画像をクリックすると、結構いい感じの画像が見られます。
  「最高に萌えってやつだ!」
 数年間のブランクを置いて再会したこの若い娘(職業:巫女)は恐ろしいほどのアニメティックなキャラになっていました。そしてそのアニメティックさ加減が厨房時代の、あらゆる萌えを無条件に受け入れて爆発道祖神させていた犬神の心にジャストミートし、早速トレーシングペーパーでバリバリと写しまくりました。当時はスキャナなんてハイテックなものはなかったので、気に入ったイラストがあったら一所懸命になぞって書き写していました……。
 ……まあ、可愛いかそうでないかっていったら、間違いなく可愛いですよね。別に巫女萌えが顕著に発症しているわけでもありませんし、ある程度萌え画像を見る際にも「理」のフィルターを幾層か重ねているのですが、それでも一応「可愛い」とは思います。当時はメガドライブwithメガCDこそ持っていてもスーパーファミコンを持っていなかったので実際に購入には至りませんでしたが、もし条件さえ揃えば間違いなく買っていたでしょう。
 ともあれこの『月夜草子』によって、犬神の小夜ちゃん(一応、どの資料を見てもちゃん付けで読んでいるので、それに従うことにします)という巫女に対するイメージは確定したといっていいでしょう。後にスーパーファミコンを購入し、いよいよとばかりに中古ゲーム店を巡業して見つけたのは↓これ↓でした。
 
 





   見てすぐにわかる通り、これは『奇々怪界 謎の黒マント』のパッケージです。イメージが少し違う。――あさりよしとお先生のイラストを見てそんな大それたことをいうのもいかがなものか、と言われそうですが、正直なところそう思いました。そしてパッケージイラストが違うので果たして買うべきかそうでないべきなのか、To be or not to be, this is a probrem――などとハムレットの台詞を思い浮かべながら吟味した挙句、「まあ一応奇々怪界だから抑えておくか」て なわけで購入に踏み切った次第です。





  そんなわけですが、結果としてこれがいい方向に転んだと思われます。人々の風評によるとこの『黒マント』が最高傑作であるといいます。ゲームとしては、これが一番(・∀・)イイ! ということですね。なるほど、どうやら遠距離用の「御札ブラスター」が二種類(エクスプロッシブ型と最高3ウェイ型)あったり一撃必殺の威力を誇る某シューティングゲームの「侍剣」に準じる威力を誇るボム「大明神クロスファイア」があったりするのは、この『黒マント』だけのよう ですね。

 そして2002年新春――犬神は奇々怪界シリーズ最新作『奇々怪界あどばんす』の購入に踏み切りました。これです、これ。
注意! クリックすると結構でかい画像が表示されます。


 何ですかね、コレ?
犬神が最初に思ったのはその1フレーズでした。時間の流れと言うのは、イメージイラストをこれほどまでに変えてしまうものなのでしょうか? これを見る限り明るく健康的でポップでキャッチーで萌え萌えしてますね。犬神が愛してやまない『コラムス』に激しく萌え要素を加えた『コラムスクラウン』の時もそうだったのですが、激しく腰砕けな感じがいたしました。まあ、それでも買いました。だって『奇々怪界』ですから。もうそれだけです。それだけですのでソフトは手元にありながら今なおプレイには至っておりません。話によるとこれまたすさまじい難易度らしいですが、恐らくプレイするのは『黒マント』『月夜草子』をクリアした後のこととなるでしょう。

 というわけで、かつての犬神に得体の知れない恐怖を与えた巫女の小夜ちゃんは、今や随分と萌え萌えした「お人形さん」の如き少女に変化してしまいました。これを妖怪変化といわずになんと言いましょう。……なんて、そこまで言うことはありませんが、しかし作品が出るごとにイラストが変わるのは……。ちなみに第一作、業務用バージョンのそれはこんなのでした。
 画像をクリックすると、どこかにあるのと同じくらいのサイズに…

 キャッチコピーは「物の怪に憑かれし者/祈願達成を望む者/他々難問を抱える者/福の神々助けし者に、御利やくあること受け合成り」及び「奇妙にて愛らしく、爽快にて悩めし、遊技成り。」でした。なればこそ過激なほどの難易度も納得できると言うもの。そのようなすさまじい困難を乗り越えた者にのみ神々もご利益を与えるのでしょう。PC版も出ていて、お手頃な価格ですので試してみるのもよろしいかと。




 ……で、ここら辺からが、色々なことを言っているようで何にも言ってこなかった犬神の言葉となります。

 果たしてどうして、巫女と言うのがこれほどまでに「萌える」存在として礼賛されるのでしょう。コスチュームが日本的で(・∀・)イイ! から? 純潔を貫き通すというプラトニックなところがあるから? シャーマンとしての神通力があるから?……

 ――はっきりと「コレだろうよ」などと断言できそうなものは犬神はまだ見つけていません。まだまだ問題提起の段階であり、これから色々な話を見たり聞いたりして理論を組み上げていきたいと思います。「オレ(僕、私、拙者)はこう思う」という話があればぜひお寄せいただきたいと思います。

 でもまあ犬神が思うに、この手の理由って言うのはひとつに絞れるわけありませんよね。理数の問題ではなくて「ひとのこころ」という不定形のややこしいものに関する話題だけに、どうとでも見ることが出来るものですからね。

 そういったことを踏まえて、今の段階で犬神が考えている「巫女萌え」の主な要因と言うのは、やはり……「純潔」というキーワードで表されるような、俗世の垢に汚(穢)されていない、聖母マリア的な美しさではないかと思います。

 現に犬神の知り合いで巫女萌え(というかナウ○カ萌え?)している奴がいたりするのですが、この人はその巫女(の、自製したイメージイラスト)を礼賛し、(妄想の中で)妻に迎え、その神通力で彼にとっての敵(どうやら現在は「家族」らしい)を撃退するのだ、ということをものすごい熱の入りようで説明するようなことがありました。彼自身はものすごく萌えているようなのですが第三者たる犬神は何とも言いようがなく、ウンとかハァとか、その程度の相槌しか打てませんでした。

 ま、それはともかくとして、その「マリア的な」と表現しました純潔性というものに対する憧憬というのはそれほど突飛なものでも奇異なものでもないことは納得できるものであると思います。ていうか、純潔性なんてややこしい言葉を使わずに処女性と言えば、よりダイレクトに理解していただけるのではないでしょうか。処女礼賛の風潮であればヨーロッパであれどこであれ、ずっと昔からあったことですからね。そしてあのジャンヌ・ダルクを例に取り上げるまでもなく、処女には不思議な力を有すると思われてきたようですから、そういったものを野郎が礼賛するのは、別に最近始まったわけではないようですね。たまたまそのようにして礼賛されてきたものが、ここ数年来、名のかどうかは知りませんがこの顕著な萌え化の煽りを受けて加速してきたと――ひとまず仮説としてこんな感じのことを言ってみましょう。

  もちろんこれは犬神がたった今思いついた仮説であり、批判の余地はありすぎてどこから批判していいのやら、といった代物であることは重々承知の上です。なればこそ皆様にこれを読んでいただいて、「自分はこう思う」という意見をどしどしお寄せいただきたく存じます。

 というわけでこの長ったらしい文章を締めくくることといたします。なおこのページに掲載された画像についてですが……出来れば転載とかはしないでいただきたいと思います。個人でお持ち帰りになる分には別にかまいません。これをベースにイラストを描いて掲載したい、または掲載した、という方はご連絡ください。犬神も見たいし(笑)。 そして最後に、著作権に関する許可は一切頂戴していないので、もしも削除要請のメールをいただいたら即刻削除する所存でございます。




 というわけで、戻る 

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追記:2008年2月16日

 「奇々怪界 月夜草子」の中古価格を調べていると、このページが……あわわわ、こんなに古いページが、もしかすると結構見られているのかも……と思い、慌てて 新しい方へのリンクを作ることにしました。一度「奇々怪界2」が出る! という噂が立った時に書いたものです。まあ、どっちがどうということはないのですが、これ に関しては、これだけがすべてではありません、ということで。

私と和幻想嗜好――新「奇々怪界」論 inserted by FC2 system