私とドリフトファンタジスタ
――『頭文字D Arcade Stage』論
 (Ver.1対応)



 
 異次元ドライビング、始動


 本作が稼動開始した2002年、私は大学3年生でした。

 大学生というと、我が国においてもっとも時間と体力があまりまくっている身分でしたから(少なくとも当時は)午前中だけ講義を受けて、午後はゲーセンなり古本屋なりで 日没まで過ごした……という、悠久の時間を過ごしていたのでした。

 そんな中、当時よく一緒に遊んでいた友人からこのゲームのことを聞かされたのですが、それまでは『頭文字D』の読み方さえ知らないほど。レースゲームは大好きでしたが、 マンガが原作ということもあり、興味も何もありませんでした。

 それでも、あまりにもその友人が「絶対面白いから!」と猛プッシュしてくるものだから、それじゃあ……ということでプレイしたのがきっかけでした。

 とりあえず、グランでツーリスモな雰囲気のゲームで一番よかった『マツダ・RX−7』を選択。色はデフォルト? の黄色で、ミッションはとりあえずATにして、 言われるままにカードを作成したのでした。

 そしてやってみると、そのゲーム性にビックリしてしまいました。

 結構きついカーブでも、アクセルを離す→思い切りハンドルを切る→アクセル踏む、といった簡単操作でキキィィィィッと横滑り、まるで自分がメチャクチャ上手に なったような気分になったのですね。

 「これはすごい」

 そして私の走り屋人生がスタートしてしまったのでした。


関東名所案内


 原作に出てきた『妙義』『碓氷』『秋名』『八方ヶ原』といった4つの峠を舞台に(Ver.3ではさらにいくつか峠が追加されています)、各峠に出没するライバルにバトルを挑み、勝利するメインモード 『公道最速伝説』と、ひとりでタイムの限界に挑む『タイムアタック』の2種類が本作には用意されています。

 これらの峠はそれぞれ初級、中級、上級、『超』上級といった具合に難易度が設定されています。

 初級コースの妙義は本当に簡単です。一番きついコーナーでも、アクセルを離してきっかけを作り、ぐいっとハンドルを切れば一気に突破することが出来てしまいます。 とりあえずこのコースで、まずはこの世界の物理法則になじむことが先決です。

 中級コースの碓氷はやや難易度がアップして、ブレーキとかシフトダウンとかを使わないと攻略できないコーナーとかも出てきます。結構苦戦しましたが、 一応ATでもシフトダウンだけは出来ることに気づいたので、それで何とかなった感じです。

 秋名は上級コースというだけあって、相当な難易度となっています。ここからは実際の峠道をそのまま再現したところらしく、道は狭いわきついカーブがたくさんあるわと、 急激に難しくなっています。それでも簡単にドリフト状態に持ち込めるゲームなので、慣れると名物の連続ヘアピンをキキイッキキイッキキイッと突破できるようになるのですが。

 そして『超』上級の八方ヶ原は……バカじゃないの!? と思うような低速急カーブの連続で、ハンドルをまっすぐにしている状態より左右どちらかに切っている時間の方が 長いんじゃないのかと思ってしまうくらいきついコースです。それだけにカッチリ走り抜いた時の達成感は、それはそれは大きなものなのです。


関東走り屋列伝


 こういったコースを舞台に『公道最速伝説』モードでは、それぞれライバルが出てきてプレイヤーに勝負を挑んできます。

 このキャラクタたちが私に原作を読ませるきっかけとなったのですが、登場時、勝った時、負けた時……と、それぞれにおいて様々なセリフを 投げかけてくるのですね。

 特に衝撃的(?)だったのが、碓氷にて出会った『秋山渉』。原作では予算の都合……あ、いや、「古い車で新しい車を追い込むのが快感なので」 でしたか、ともかくあえてAE86に乗る、走りに対するモチベーションはトップクラスの人なのですが、それはゲームの中でもその通りでした。

 いや、モチベーションと言うか……ひがみ根性のような感じがしましたね。

 ひとつ前のライバルに勝利するといきなり勝負を挑んできて(それがこのゲームの仕様なのですが)、お金がないので断ると「俺がハチロクだから 勝負してくれないのか」と言ったり、実力で負けたのに「ビンボーくさいターボチューンなんか相手にできないってわけか?」と言ったり、過大評価 しまくってるんですよねコチラをね。

 他のライバルたちも登場時にアレコレ言ってくるので、どうしても「負けたくない!」という気持ちになってしまいます。実際、8年ぶりに最近 プレイし始めたのですが(Ver.3)、最初は「まあ別に勝っても負けてもいいや」と思っていたのに……妙義峠のライバル「庄司真吾」に煽られ、 一気に当時のような気持ちにさせられてしまいました(笑)。

 あとはこちらの車によって、ちょっとリアクションも違うみたいですね。こっちがRX-7で挑んだ時には中里毅(スカイラインGT-R)に 「イモロータリーなんかに負けっかよ!」と言われたり、そのスカイラインGT-Rで庄司真吾に挑むと「お前、昔……もしかして毅に付きまとってた GT-Rじゃねえのか!?」と言われたり(何やら、そのバトルで負けたせいで中里がGT-Rに乗ることになったらしい……とWikipediaで読みました)。

 果たして原作でGT-Rを「ブタのエサ」呼ばわりしていた高橋啓介や、実際に走り屋人生を大きく変えるきっかけになったこの車を見た時の中里毅は どんなリアクションをするのか。そのことを今から想像している私がいるのでした。


 まさに本作のための車!――FRの車について


 初めて運転した車、そして最終的にVer.1の全峠を制覇したのが、このRX−7(FD3S)でした(一時期、MR2を運転していたこともあったのです。後述)。

 実車も重量バランスが理想的で非常に運動性能が高いと評判のこの車はゲーム内でもその通りで、非常にキビキビ曲がってくれますし、ドリフトも簡単&安定して 仕掛けることが出来ます。まさか原作で準主役が乗ってるからってわけではないと思うのですが(笑)、とにかくすばらしい車でした。

 ちなみに、MR2の操作のシビアさに辟易したあとは改めてMTでカードを作り直しました。ついでに色も真っ白くして、エアロパーツもマツダスピード製のものを ゴテゴテつけまくって、最終的にガンダムか何かのようにド派手でカッコイイ車になりました。

 もしカードの引継ぎシステムがあることを知っていれば、この車を今もずっと使い続けたのでしょうが……そう言うのがあると知らなかったので、Ver.2では同じく FD3Sの最終モデル『スピリットR』でカードを作成。ただしこちらはそれほど深くハマらなかったので、せいぜい『妙義』『碓氷』くらいしかクリアしなかったんじゃないかな。

 だとしても何にしても、実車のイメージとあわせて、大好きな車です。


  これはリッジレーサーか!?――MRの車について


 ゲームにも大分慣れて、そろそろATじゃ物足りないな……と思ってきた頃、マンガの方でミッドシップ方式の車に乗った『小柏カイ』という男のあたりを読んでいて、 いかにMR車が優れた運動性を持っているかというのを説かれ、すっかり影響されてしまった私が次に選んだ愛車。車がよくても自分の腕がついてこないとダメダメだというのは当然ですが、 まさにその通りでした。

 運動性能がいいといえば、その通りなのですが、ゲーム内では超オーバーステア仕様となっていて、RX−7と同じ感覚でハンドルを切るとほぼ真横を向いてしまいます。 感覚としては『リッジレーサー』シリーズのような旋回性能です。おかげで最初の峠のライバルたちにさえ苦戦、または惜敗してしまうような有様。

 原作でも小柏カイは幼少の頃からカートに慣れ親しんでいたので、その性能を100%引き出していたのですが、私にはちょっとキツイものがありました。そのため 先述したように白のRX−7に再び乗り換え、全峠制覇と相成ったのでした。


  真っ直ぐ走ろうとするんだ――4WDの車について


 今回、8年ぶりの挑戦にあたり選んだのは、日産・スカイラインGT-R(R32型)。あえてこの車を選んだのは、中里毅が運転してるから……ではなく、最近32Rの開発者が書いた 市販車とレース仕様車の詳細な内容が書かれた本を読んだため。まだ小学生の頃から好きだった車でしたが、その本を読んで「走るならこれしかないだろう」と思ったため。命を乗せて走るんだ、 いちばん好きな車で行くのが当然だろう――。

 マンガでは重量ゆえにタイヤがタレやすいだのアンダーが出やすいだのと言われ、ゲーマー間では『直線番長』の蔑称で呼ばれているのですが、アンダーなのはテメーのウデなんだよって話ですよ。 曲がりにくいのを逆手にとって早めにハンドル操作を済ませ、立ち上がり重視のラインを取ればいいのです。そうすると、その絶大な安定感でグイグイ前に進んでくれるのですね。

 4WDには4WDの走り方がある。曲がりやすい車と言うのは、安定感を欠く車ですからね(FDは、氷の上を滑るようなきわどさのある性格だと『湾岸MIDNIGHT』で 語られていましたし)。最高速度の低い峠道ではそれでもいいのかもしれませんし、同じ4WDならインプレッサとかランエボとかの方がいいのでしょうけど……だからこそ、かな。原作でも 散々コケにされていたし、逆にこれで勝ち進んで行きたいものです。


 いったん陸に上がった魚ではありますが……


 Ver.1が各地のゲーセンにて現役で稼動していた頃、先ほど申し上げたように私は大学生でした。

 そうなると、まあ小金と時間が有り余る身分ですからね。講義のない日は開店と同時にゲーセンに行き、何度となくプレイしまくりました。

 今はもう店舗それ自体なくなってしまったのですが、当時私の友人の先輩がゲーセンの店員をしていて、本来コインシューターに入れるべき100円玉をその店員さんに 直接渡すことにより、通常よりも多くクレジットを入れてもらっていたのでした。もちろんイケナイことだとは思いますが、そういうチャンスがあるのなら最大限生かすのが 人間でしょう。

 負けても負けてもトライし続け、ついに全峠制覇。さらにタイムアタックでは一番難しい八方ヶ原において、その店のコースレコードを塗り替えると言うオマケつき。 まあ、隠しキャラの藤原ブンタ(Withインプレッサ)には手も足も出ず完敗でしたが、それでもちゃんとエンディングまで見ることが出来たので、よかったと思います。


 一応Ver.2でも新しいカードを作り、多少はプレイしましたが、Ver.1で全峠制覇してしまっただけにまた最初からやり直しと言うのが、あまり気が進まなかったのですね。 また同じくらいのお金と時間を投じるわけにも行かない、と言う気持ちもありましたし……。

 そういうわけでVer.2はほとんどプレイせず、その後は『頭文字D』じたい、あまり好きではなくなったのでず〜っと見向きもしませんでした。


 最近、Ver.3を1プレイ50円(カード作成料金も50円)で出来る場所があったので、またプレイし始めました。愛車は先ほど申し上げたようにスカイラインGT-Rです。

 昔取った杵柄と言うやつで、走ってるうちに何となくコースとか操縦感覚を思い出してきたものの、妙義峠の最終戦は多少相手に先行を許しながらの勝利でした(最終的には 70mくらい差をつけて勝ちましたが)。

 一度陸に上がった魚は、再び水に戻っても長く泳げないと言いますし、全峠制覇できるかどうかはちょっと自信がありません。――だから、とりあえず自分の腕がどれくらいまで 通用するのか。まあ、行けるところまで行ってみたいと思います。

 


他のアーケードゲームについて見る 

それよりもっと戻る 

inserted by FC2 system