鎌倉幕府成立820周年記念特別企画
――『源平討魔伝』論




 いい国作ろう鎌倉幕府といえば、その昔『おれは直角』というアニメのオープニングテーマにも歌われたほど 有名な語呂合わせです。源氏と平氏の争いに勝った源頼朝が征夷大将軍に任命されて云々。小学校の授業でも 習います。

 そういうこともあってか、当時私が読んだ歴史漫画などでは『やりたい放題の平氏を、頼朝がやっつけて平和な 時代を切り開いた」という印象です。私もかつては大の頼朝好きで清盛嫌いでした。

 しかしながら、今年の大河ドラマは『平清盛』。平氏の元締めです。視聴率はちょっとふるわないみたいですが、 あえて平氏の棟梁を主役にすえてきたNHKにはウムムとうならされます。

 そんなこんなで、今年は平氏寄りの源平イヤー。そして「元祖・平氏よりの源平物語」といえば、やはりコレ。

 って、やや強引な前フリと思われるかもしれませんが、 とにかく書いていきたいと思います。なお今回は超有名ゲームなので、歴史とかゲームシステムとかをあまり掘り下げることはしません。 私なりの感想をズバズバと書かせていただきます。


復 讐 絵 巻

 地獄から復活した豪の者・景清が、悪魔に魂を売り渡して日本を支配する頼朝に復讐を果たすべくよみがえり、 壇ノ浦から鎌倉まで戦い抜く道中を描いた本作。出てくる敵は大体が純和風のキャラクタです(平安京エイリアン は……ある意味和風か)。

 一応、一般的な横スクロールアクションのほかに『平面モード』『BIGモード』とありますが、なんといっても 本作の最大の魅力はこの『BIGモード』でしょう。

 『THE 功夫』で「PCエンジンといえば『美麗ででかいキャラがグリグリ動く』ド迫力ゲーム機」という衝撃を 与えてくれたハードですからね(個人の感想です)。しかも岩手県民にとっては非常に馴染み深い源義経や弁慶と いったキャラクタが出てくるということで、さらに期待しました。

 ところが、これがなかなか難しいんですよね。なんといっても横スクロール面の『要石(かなめいし)』。 ある時は真横にスーッと流れるように現れ、ある時はバウンドしながらいくつも現れて。足を滑らせて落ちたり 壁との間に挟まれてズゴゴゴと連続ダメージを受けたり、はたまた敵を斬ろうとしたら剣が石に当たって攻撃力が ガタ落ちになったり。

 あとは、有野課長ではありませんが『龍』が若干トラウマになりそうなくらい強いんですよね。最近になって 攻略情報を参照し、ようやっと倒すことができましたが、それだって何回かチャレンジしてたまたま上手に行って って感じだったから。

 まあ、それでも巷間で言われている通り、「やればなんとかなる」難易度のようです。割かし低い難易度のまま 最後までいけるルートもあるので、それを参考に皆さん頑張りましょう。私も最近ようやっと、インチキなしで クリアすることができたし。


ピックアップ源氏方 『源義経』


 最近はピンで主役を張るゲームもちらほら出て、根強い人気を感じさせる源義経。源氏でも平氏でもなく奥州 藤原氏の国である岩手県民の私にとっては、兄弟げんかの末に頼って落ち延びてきたこともあり、なおのこと 思い入れがあります。ちなみに沿岸北部には、義経が北方へ逃れる途中で航海の安全を祈願したという伝説が残る 神社があったりします(いわゆる『義経生存説』ですね)。

 そんなみんなのアイドル・源義経なのですが、本作ではすでに悪魔に魂を売り渡した後なので、魔物100% といった風貌と性格になっています。

 最初に出てくる、小刀を投げつけてくるバージョンはまだよろしい。一般的には山城国で出会うバージョンは 「殺して進ぜよう!」といって登場し、「オホホホホ!」と高笑いしながら剣で斬りつけてきたり回転アタックを 繰り出してきたりします。非常にかっこいいテーマソングとあいまって、私が『源平討魔伝』を大好きになった 理由のひとつであることは、ゆるぎない事実であります。


ピックアップ源氏方 『弁慶』


 先ほど触れた義経と同じくらい好きなのが、その義経に仕えた武蔵坊弁慶。最後の最後まで主君を守り抜こうと して立ったまま往生したという伝説のある忠義と武勇の人ですが、やっぱり本作では魔物の手先になっています。

 じつは本作に限り、義経よりも弁慶のほうが好きなんですよね。なぜかといえば、やっぱりせりふがあるから。

 メロディアスな出だしで流れる義経のテーマと違い、ズンチャ、ズンチャ……とリズムを刻みながら始まる 弁慶のテーマ曲。それを聴きながらしばらく歩いていくといきなり、

 「ばぁ〜かめぇ〜」

 と言いながらズドンと空から降ってきます。そして当たればいかにも痛そうな鉄球をポンポン放り投げてくるわ、 その鉄の球がついた棒切れで「おぅりゃ!」と殴りつけてくるわと、パワフルきわまりない攻撃を仕掛けてきます。 実際に当たるとかなり痛いです。

 それでもPCエンジン版は『弁慶の泣き所』であるスネをしゃがんだまま斬りつければOKです。そして激闘の末に 退けると、

 「これで勝ったと思うなよぉ〜」

 と言いながら沈んでいきます。本当に好きなせりふです。あれから20年くらい経ちましたが、今でも何かの 機会に使ってしまいます。『源平討魔伝』が好き! という気持ちを分析すると、義経と弁慶が70パーセント くらいの割合を占めるんじゃないかな。そのくらい好きです。


ピックアップ源氏方? 『琵琶法師』


 これは敵キャラではあるのですが、敵意むき出しの義経や弁慶とは少し違う感じがします。

 まず、原則として倒せない。鳥獣戯画の魔物を吐き出してくるものの、あまり積極的な攻撃という感じがしない。 そして一定時間経つと「さらばじゃ」と自分から去っていく。諸行無常をそのまま曲にしたような穏やかの極地と でもいうべき楽曲も含めて、ある意味では一番『源平』らしいキャラクタのような気がします。

 一応、ちょっとした裏技をすれば倒せるようですが、犬神はあえてこの琵琶法師を倒したいとは思いません。 その代わり、しばし琵琶の音色(を模したPCエンジン内蔵音源)に耳を傾け、雰囲気を味わいたいと思うのです。 まあ、鳥獣戯画に触れるとダメージを受けるので、常に剣を振りながらですけどね。


ピックアップ源氏方 『源頼朝』


 そして頼朝です。諸悪の根源。魔族と結託し、日本を魔界に変えてしまった討つべき者です。

 ゲーム内では基本的に、歴史の教科書に載っているあの姿で出てきます。横スクロール画面では無敵の超巨大 キャラとして「ふはははは」と高笑いしながらズズズッと現れ、「戯れは終わりじゃ」と言いながら『死』と 書かれた「しゃく」で殴りつけてきます。倒すことはできないので、ひたすら逃げるしかありません。 ちなみに白目をむいているのですが、それが何となくメガネにも見えるので、一部では『タモリ』と 呼ばれているようです。

 倒せるバージョンは最終ステージ・鎌倉に現れます。こちらは座ったまま空中をふわふわ漂っています。 一応、第二形態・第三形態と変化するのですが、三種の神器をそろえていればたいした敵ではありません。 とにかく前進しながら斬りつけていけば、BGMの前奏部分が終わらないうちにクリアすることができるでしょう。 とかく『弱い』といわれるラスボスですが、すべては三種の神器のおかげ。征夷大将軍・魔族の棟梁といえど、 神様の力には勝てないのです。

 かくして斬って斬って斬りまくると、「我が魂は、不滅じゃ」と負け惜しみを言い放ちます。そしてその 言葉を受けた景清もまた、あるべきところへ帰っていくのでした。


神も悪魔もいない地に立って


 当時はこの結末、あまり好きではありませんでした。せっかく頼朝を倒したのに、何で景清も死ななければ ならないのか、まったく理解できなかったのです。

 でも、今なら何となくわかるような気がします。元々死人ですしね。それが天帝の意思と安駄婆の力によって よみがえり、それで戦っていただけだから、目的を果たしたら、もう存在する理由がなくなるわけで。そういう ことできっと、あの結末になるのでしょうね。

 そして最後に流れるメッセージ。これは『神』と『悪魔』のあだ名を持つ、当時のナムコのプログラマーに 向けられたメッセージであるといいます。『悪魔』とあだ名をつけるのもどうかと思いますが、どちらも非常に 優れた技術者だったのでしょう。

 ただ、そのことを知ったのは最近、ネットで『源平』がらみの情報を調べまくったから。そもそもPCエンジン版では 『故・深谷正一氏に捧ぐ』という言葉も削除されているから、そんなことぜんぜんわからないんですよ。

 そこで犬神は、字義通り解釈しました。神様(=景清自身、あるいは景清をよみがえらせた天帝)は死んだ。 悪魔(頼朝)はあの言葉どおり死なないけど、とりあえず去っていった。そして神も悪魔もいない大地に、自分 たち人間の世界があるのだ……ってね。

 これは要するに『女神転生II』のアナザーエンディングと同じですね。先にそのエンディングを見ていたから、 同じイメージで捉えてしまったのです。

 まあ、開発者本来の意図とは違いますが、「本来はそういうものだ」ということを尊重しつつも、私はそういう 解釈をして感じ入った。そのことを事実として書かせていただきます。


 


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