私とナムコット・ファンタジア
 ――『ドラゴンスピリット』論(PCE準拠)


 本作、特にPCE移植版の本作は、私にとって非常に思い出深いソフトです。

 今から25年以上前。基本的にゲームを買ってもらう時は新品だった時代。今なお岩手県盛岡市の中心街で営業を続ける老舗百貨店『川徳』で買ってもらったものです。ちなみに兄者はファミコンの『グラディウスII』だったかな。

 これは私が初めて自分の意志で選んだPCエンジンのソフトなのです。

 当時はまだ小学校低学年。それなのにどうして『ドラスピ』だったんだろう。今にして思えばちょっと不思議な感じですが、まあ…アレかな。パッケージが格好よかったからかな。要するにヒロイックファンタジー感120パーセントの表紙。

(画像:PCE版ドラスピ)

 ただ、そのゲームの面白さを真に味わうことができるようになるまでは、結構な時間がかかりました。そして初めてエンディングを見たのは、買ってもらってから10年以上の年月が経ってからのことでした・・・。


 アムルゥ〜!(PCE版ではしゃべりませんが)


邪悪の根源である『ザウエル』に麗しきお姫様『アリーシャ』が連れ去られ、それを助けるべく王国の守備隊長『アムル』が戦いを挑む・・・というのが本作のストーリィ。基本的にアムルは人間なのですが、かつて『ザウエル』を戦いこれを封印した太陽神アーリアの力を借りてブルードラゴンに変身します。そして強烈な炎を吐き、魔物たちを焼き尽くします。

操作は8方向レバー2ボタンで、攻撃は対空対地と使い分けをします。対空はともかく対地の攻撃は『ゼビウス』のそれと比べると射程が結構短く、ある程度敵に接近しないと攻撃が当たりません。その間はもちろん敵も空中地上それぞれから攻撃してくるし、何せドラゴンの当たり判定が結構大きいので、一撃離脱と言うか、結構ドキドキです。

そう、私が個人的に『難しいな』と思うのは、この当たり判定の大きさです。昨今のゲームのように「一所懸命に敵弾をかいくぐったつもりだけど、あえなく撃墜されてしまった」というのではなく、「このままだと弾に当たるけど、逃げようがない」という状況でやられてしまうことが多い気がします。

だからとにかくパワーアップして、「撃たれる前に撃つ」そういう心がけで進めるのが基本なのかな、と思います。


 地獄の業火でヤキトリでも作って鬼どもに(ry)

 本作のパワーアップは基本アイテムと特殊アイテムに分けられます。

 基本アイテムと言うのは、地面に落ちている赤青の卵を割ると出てくるものです。赤球は(3個取れば)対空攻撃がパワーアップし、青球は首が一本増えます。首が増えれば当然、吐き出す炎も2本3本になりますし、対空対地への攻撃を同時に行うことができるようになるので、相当強力になります。一方で当たり判定も強力になるので、あえて2本首くらいに抑えておくという作戦も有効でしょう。

 特殊アイテムは、制限のあるものと制限のないものがあります。

 連射力は少々落ちるもののボスを5秒で倒すことができる「ファイヤーブレス」、反対に火力は最低ながら3方向に弾を打ち出す「ワイドショット」、本作最大の泣き所であるあたり判定を大幅に縮小させる「スモール」とかはダメージを受けるまで効果が継続します。

 画面中を飛び回って敵を自動追尾してくれるものの今ひとつ性能がよくない「ホーミング」画面全体がズゴゴゴと揺れて地上敵が次々と壊滅する「アースクエイク」なんかは、一定時間のみ効果が持続します。冒頭申し上げたように、結構地上敵を倒すのが大変な本作では、すごく有効です。

 それ以外には得点アイテム、エクステンドアイテム(取ると「卵」→「雛」というプロセスを経て3個目でようやく1エクステンド)、そして恐怖のパワーダウンアイテムが出ます。これはダメージを受けるわけではないのですが、パワーアップは一段階下がり、せっかくの特殊効果もキャンセルされてしまいます。

 何でこんなアイテムがあるんだ! とハラが立ちますが、まあ仕方がありません。これを避けてダメージを受けるくらいなら、甘んじて受け入れてしまいましょう。


 野を越え火山を越え氷河も越えて

 本作は全7エリア。・・・AC版では全9エリアだったんですが、7面と8面がカットされています。氷河を越えていきなり魔宮です。またAC版ではボスを倒した後、いったん画面が停止した後にそのまま画面がスクロールして次のエリアに行きますが、PCE版はいったん画面が暗転して次のステージが始まります。

 ざっと書き出していくと、海沿いのカルスト台地からスタートして火山がボコボコ吹き出す山岳地帯を抜け、大森林・峡谷・洞窟・・・そして氷河・・・という感じで展開していきます。これらのエリアはいずれも全然違った雰囲気で、ステージギミックなんかも非常に凝っています。

 要するに、「次はどうなるんだろう」そんな風に思っちゃうんですよね。だから難しくても何でも、ついプレイしてしまう。当時は3面まで行けるかどうか・・・というレベルだったのですが、それでも1面と2面だけでもプレイしてしまう。そんな感じです。

 そして、その世界観を10倍盛り上げてくれるのが細江「めがてん」慎治さんの楽曲! 後に「太鼓の達人」にも収録されましたが、これがもう世界観にマッチして・・・マッチしてるだけじゃなく魅力をドンドン積み増してくれます。25年以上経った現在でも、まったく色あせる感じがしません。

 たとえば、3面の音楽は、生い茂る木々が風に揺れている情景が目に浮かぶようですし、5面の曲はいかにも暗くて狭い道中を行くプレイヤーの心情を表しているようです。そして6面は、苛烈さを増す戦いにくじけそうになる心を奮い立たせてくれる感じがしました。

 おまけ:2016年、アーケード版を初プレイする

 昨日、初めて本作のアーケード版をプレイしました。場所は盛岡市にあるゲームセンター「Vict」さんです。

 ここはかつて「ハイテクセガ」が入っていた土地で、全盛期にはクレーンゲーム・大型筐体ゲーム中心の「クラブセガ盛岡」に対しビデオゲーム中心の硬派な場所として漢たちの憩いの場となっていました。その後ハイテクセガは閉店してしまいましたが、現在は(多少はプリクラやクレーンゲームなどがあるものの)新旧の格闘ゲーム、そして不定期に入れ替えられるレトロゲームコーナーが共存する、今時珍しい「ザ・ゲーセン」といった雰囲気を維持しています。

 そこで「テラクレスタ」「メタルブラック」「ファンタジーゾーン」と並んで稼動していたAC版「ドラスピ」を初プレイ。オープニングでアムルが聖剣をかざしドラゴンに変身するデモ画面、倒した後に残骸が残る地上敵、炎揺らめくタンブラァー(2面に出てくる火炎弾)など、細かいところにいちいち衝撃&感動を受けました。

 難易度的には、連射装置がついていたので、随分と助かりました。4面の竜巻など、PCエンジン版にはなかったギミックがたくさんあるので、それにてこずったことはありますが、うん、随分とラクができたのかな。そうじゃないと多分、敵に押し込まれてもっと早くゲームオーバーになっていたことでしょう。

 やはり、こういう時代なんですよね。「家庭用移植版? まあまあ頑張ってるよね」「でも本当にスゴいのは、やっぱり業務用でしょう」そんな時代。いつでも何度でもプレイできる家庭用バージョンはありがたいけど、やっぱり色々な意味でアーケード版には勝てない。そういう時代。どうしても同じクオリティで遊びたかったら自分で基板を買うか、X68000を買うしかない、みたいな。

 いや当時、私も「マイコンBASICマガジン」の中古基板価格表なんかを何度も眺めてはため息をつきました。「ストIIダッシュ」が25万円くらいした時代です。それが今では・・・ま、それはいいか。

 縦画面と横画面、業務用と家庭用、そういう違いは確かにあります。演出的にも色々とカットされている部分があります。というかステージが丸ごとカットされている部分もあります。

 ただ、PCエンジン版の「ドラスピ」は確かに「ドラスピ」なんです。というか私にとってはPCエンジン版の方こそオリジナルの「ドラスピ」であって、決して見劣りするものではないんです(この時、兄者が買ってもらっていた「グラディウスII」も同様)。

 そんなわけで、終盤ちょっと失速した感もありますが、こんなところで記事を締めくくります。前回の「ダライアス」と並び、とてもすばらしいタイトルなのであります。 
 

 


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