純和風殺陣スクロールSTG
「電忍アレスタ」再々評価論
 (update 2009/12/31)



  旧記事はこちら



   以前、この『電忍アレスタ』について、書いたことがありました。
 
 どうせ誰も見ないだろうから、と言って、とにかく勢い任せで書きたいことだけ書いて隅っこにおいておこうかなと。
 そもそもの切っ掛けが、「ネットで色々と本作についての批判的な意見をたくさん目の当たりにして、なんか嫌な気分になってしまったから」ということもあって、とにかく一気に書き上げた感じの文章でした。

 ただ、最近(2009年12月)たまたま音楽を聴き、「そういえば昔、このゲームについての記事を書いたっけな」と思って、自分で検索してみたら……結構、上の方まで来ていたんですねコレが。
 
 当時のまま残すのがいいのか、それとも改訂してきちんと書き直した方がいいのか。
 
 ……と少し考えた結果、私自身がちょっと読みづらくて我慢できないので(笑)、新たに文章を書き直すことにしました。
 
 
 コンパイル10周年記念作品
 
 
 1992年、「コンパイル10周年記念作品」という触れ込みで発売された本作は、10周年と言うこともあってか、他の作品とは全然違う世界観となっています。

 「今をさかのぼること、400と数十年……」と、『紅の豚』のポルコの声で始まるオープニングで語られるところによれば、私たちの時代で言う戦国時代。種子島に漂着した一隻の南蛮船がもたらした『鉄甲兵』と『飛空船』によって戦いの形は激変し、その時流にうまく乗った者たちのみが生き残る世界となっていたのでした。

 そんな中でも特に、尾張の織田信長は積極的な外交・軍事政策で勢力を拡大していたのですが、同盟国である美濃の斎藤道三が暗殺されると、それ以外の武将(今川義元、武田信玄、上杉謙信、長宗我部元親、島津貴久、そして毛利元就)が同盟を組み、いっせいに攻めて来たのですね。
 
 もはや織田家の滅亡も時間の問題か……と誰もが思っていたのですが、まだ織田家には誰も知らない秘密兵器が温存されていました。それが『鉄甲兵』をもとに改良を加え速度・火力とも飛躍的にアップさせた新型兵器『電機忍兵』……すなわち『電忍・アレスタ』なのです。
 
 
 ひみつ大公開・これがアレスタだ!
 
 
 主武装はまっすぐ飛ぶクナイのメインショット、および前方にふわふわと浮かぶ、『ゼビウス』で言うところのシオナイトみたいなオプションである「太狼丸」と「次狼丸」です。

 攻防両用の万能兵器(ただし真正面からの攻撃には弱い)であるこの「太狼丸」と「次狼丸」は、ボタンを少し長押ししてタメると、ミュミューンと高速で飛ばすことが出来ます。中型の敵なら当て方によっては一撃で破壊することが出来るので、ボス戦や復活直後でショットの攻撃力が弱い時などには重宝します。

 またこれ以外にも時間でやってくるアイテムキャリア(このあたりは伝統ですね)によってもたらされる4つの特殊兵器が使えるようになります。おおよその仕様は以下の通りです。
 
 「雷閃波」(青) 真正面に極太レーザーを発射するもの。貫通力は高いです。なおかつ攻撃判定がわかりやすいので、一番使い勝手がいいような気がします。
 
 「爆龍鳳仙花」(赤) 自機の周りにパラパラと小爆発する爆弾をばら撒きます。武田信玄など、真正面から攻撃するのがちょっと怖い敵などに対して、横からチクチクとダメージを与えられるので、場合によっては使えるかもしれません。
 
 「飛影滅風陣」(黄) 先ほど申し上げたオプション『太狼丸』『次狼丸』をパワーアップさせてくれるものです。自機の周りをくるくると回るようになるので、全方位からの弾を消してくれます……が、その速度があまりにもゆっくりなので期待するとたぶん死にます。それよりもオプション飛ばし攻撃が強力になります。
 
 「風車手裏剣」(緑) よくあるワイドショット系の武器です。ひとつひとつの手裏剣の攻撃力はあまり高くありませんが、ザコがたくさん出てくるところでは結構使えるかもしれません。ただ、ここまで書いてきて何なんですが、実は最初に書いた『雷閃波』一本で最後まで進めるような印象があります。
 
 
 と、こんな感じで反織田軍事同盟の盟主である毛利元就が居座る宮島城目指して行きましょう。
 
 
 戦う人たち
 
 
 個人的に「アニメで動く、人がしゃべる」ゲームと言うのはCDでしか実現できない! と思っていたのですが(それは本作が発売された1992年当時は、間違いではなかったと2009年現在も思うのですが)、本作でもその仕様は搭載されています。しかも製作協力・青二プロダクション!? ということもあってか、どこかで聞いたことのある声でキャラクタがバリバリしゃべってくれます。以下にそのあたりのことも含めて書いていきたいと思います。
 
 影狼(カゲロウ cv.緑川光)
 
 主人公。一応、忍者なのですが、そのくせ花や小動物を愛する優しいこころを併せ持つ好青年。「操縦技術よりも乗り込む者のこころが、アレスタを強くするのじゃ」と里の頭領が言ったかどうかわかりませんが、ともかく兄弟子を差し置いてこの秘密兵器の操縦者となり、主君・織田信長のためにたったひとりで戦いに飛び立ちますが、その戦いの中で見たものは……。
 
 鉄(クロガネ cv.神谷明)
 
 影狼の兄弟子。性格は説明書によれば破壊的で残忍な性格だそうです。実際に『アレスタ』操縦者の座を影狼に奪われたことに憤慨したからなのか、自分たちの頭領・臥龍斎を亡き者にし、ついでに自分たちの里をも壊滅させてしまったのでした。
 
 アレスタの代わりに搭乗するのは、アレスタそっくりに自分でコツコツ作り上げた『飛竜』。ただ性能は当然ながら? アレスタの方が圧倒的に強く、1面のボスとして出てくるもののあっさり撃退できることでしょう。
 
 しかしながら「兄より優れた弟など存在しねぇ!」を旗印に、ジェネレータを2基から4基に増設してパワーアップ、拡散波動砲みたいなものを装備した『飛竜改』でリベンジを果たすべくやってきます。
 
 ……そしてその後、どうしても負けを認めたくない鉄は電忍としての隠密性などを完全に無視し、戦艦のエンジンや主砲を取り付けた超絶人型決戦兵器『火竜』をもって、みたび影狼の前に立ちはだかるのでした。
 
 かくも鉄が意地になるのは嫉妬ばかりではない……というのは、ゲームを進めていけば何となく感じられるところ。ただひとつ言えるのは、『火竜』は見た目・攻撃力ともに圧倒的なシロモノであり、正直よくこんなもの作ったな、とヘンなところに感心してしまいました。
 
 冴刃(サエバ cv.久川綾)
 
 伊賀忍軍のくのいちです。一応は本作のヒロインなはずなのですが、ゲームをそこそこ進めないと出てこない上に、あんまりストーリィの本筋にからんでこないところに、本作にかけるコンパイルの硬派な心意気を感じます(?)。
 
 愛機『夜叉姫』は搭乗者の趣味もあるのか、非常にコンパクトにまとめられた機体です。
 
 
 戦国武将名鑑
 
 
 あとは、主君・織田信長以外の武将たちが、それぞれ自分専用の巨大鉄甲兵に乗り込んで各ステージのボスとして登場します。以下に犬神の印象をダイジェストで書きます。
 
 今川義元の場合:『武者王』。唯一の地上歩行型鉄甲兵。結構リーチの長い2本の刀で切りつけてくるほか、腹部に内蔵された火炎放射器でブォーッと攻撃して来ます。画面最下部の左右が安全地帯なので、そこから出たり入ったりしながら撃ちまくっていれば問題ないと思われます。
 
 上杉謙信の場合:名前なし。背中に巨大ジェネレータを背負い、『バトルガレッガ』の要塞面ボスみたいな長い腕をグルグル振り回す飛行型鉄甲兵。機体中央の何だかアレなところから撃たれるレーザーは画面上部にいれば当たらないのですが、さりげなく撃ってくる通常弾に注意しましょう。
 
 武田信玄の場合:名前なし。5年かけて作った超巨大浮遊戦艦を破壊された恨みがあるのか、画面内を縦横に快速で飛び回る強敵。多方向レーザーは縦横の方向を間違えなければ特に難しくはないのですが、実際に戦うと気持ちが焦って判断を誤ってしまうこともしばしば。本作でも一二を争う強敵です。
 
 長宗我部元親の場合:名前なし(こればっか)。瀬戸内海担当だからなのか、亀型海戦用鉄甲兵となっています。一応、レーザーやミサイル発射装置などを打ち出してくるのですが、雷閃波を装備していれば真正面から撃ち続けるだけで勝手に弱点に当たり続けて破壊できてしまう悲運の大型兵器。
 
 島津貴久の場合:『牙門王』。武田信玄の鉄甲兵にも劣らないくらいの機動性を持って、時々アレスタに突進してくるので、当たらないように気をつけましょう。また、肘関節のない寸詰まりのような腕はシャキーンと伸びて弾を打ってくるので、この敵に限ったことではないのですが、距離を置いて戦いましょう。
 
 毛利元就の場合:名前なし(……)。虫みたいなフォルムで城内を這いずり回るところが、本人の性格をよくあらわしていると言えましょう(広島の皆様すみません)。サーチレーザー、画面中を覆うミサイルなど、火力はさすがにトップクラスなのですが、例によって雷閃波で攻撃しまくるとすんなり撃破出来てしまいます。ここまで書いて来て導き出されたひとつの結論は、「最強の攻撃は武田信玄の高速タックル」ということですね。ウン、きっとそうだ。
 
 
 見え隠れする謎の女性『アスタロス』(cv.寺瀬めぐみ/現・寺瀬今日子)
 
 
 こんな感じでバキバキ破壊しながら進んでいくのですが、途中(上杉戦直後くらいから)から『アスタロス』という謎のキーワードが出てきます。まあ説明書にも載ってますし、途中で入浴中のヴィジュアルシーンも挿入されるので、プレイヤー側からしてみればあんまり謎でもないのですが……。
 
 中盤以降明らかになるのですが、今回の一連の戦いはすべて彼女の仕組んだことであり、次々と送り込まれる鉄甲兵も彼女が異世界からテレポートさせている代物なのですね。
 
 で、毛利元就をはじめとする戦国武将たちは彼女の言葉に従い、織田を殲滅せんと一致団結してきたのですが、中には必ずしも自分の意志ではなく、何らかの切っ掛けによって操られていた人たちもいました。地理的にかなり離れている長宗我部氏や島津氏がそんな感じです。
 
 果たして彼女は一体何者なのか?……それはゲームを進めていき、すべての戦国武将たちを倒したあと、明らかになることでしょう……。
 
 
 ……と言って、「よし、やってみるか!」と簡単に出来ないですよね。今時メガCDを実機で持っている人なんて、どれほどいることか。しかもバーチャルコンソールに移植される可能性もたぶん皆無に近いでしょうし……
 
 というわけで、以下にはストーリィの全容に関わる部分を記載します。自力で解きたい方は見ないでください。
 
 
 
 
 いいですか? じゃあ、書きますね。
 
 アスタロスは影狼たちの住まう世界とは別な空間――「地獄界」に居を構える人です。まあ、人と言っていいのかどうかわかりませんが。
 
 性格としてはそこまで好戦的なわけではないのですが、搭乗する鉄甲兵は地味にいやらしい攻撃(画面を縦横に動き回り、適当なタイミングで結構速いレーザーを撃って来る、など)をけしかけてきます。派手さ、インパクトでは直前の『火竜』に及ばないものの、ラスボスにふさわしい強さを誇ります。
 
 他国の武将たちを言葉で操って主君・信長を襲わせるわ、兄弟子を畜生道に貶めさせるわと、影狼にとってはまさに諸悪の根源なのですが、彼女に勝利した直後にすべての真相を聞かされることになります。――すなわち、信長こそが破壊の魔王の転生した姿であり、この地獄界のみならず地上界をも混沌と破滅に導こうとするものであった、ということなのです。
 
 崩れゆく自らの居城とともに消えるアスタロスが最期に残した言葉が、再び地上界に戻ってきた影狼の耳の奥にこだまします。
 
 「信長を……討て……」と。
 
 
 そして……
 
 
 宮島城から、とりあえず来た道を戻ると、影狼は京の都で炎に包まれる本能寺を見て愕然とします。
 
 「……あと少しで、天下を……」

 炎の中に立つ信長は、神谷明の渋い時の声(毛利小五郎みたいな)で語りました。

 「……いや、全世界をわが手中にできたと言うのに――是非もなしよのう……」

 「……信長公……」

 自分が育った忍びの里はすでになく、今度は主君をも失った孤独の忍びは、目を閉じてその名前をつぶやくばかりでした。その後、影狼がどうなったのか、それは誰も知りません……。
 
 

総括  
 
 CDを、音楽プレーヤーで再生すると、声優の人がステージ開始デモの台詞をしゃべっているのが聞こえますが、残念ながらバグなのか仕様なのか、実際のプレイ中は声を聴くことが出来ません。
 
 基本的に語りたいことはすべて語ったので、改めてこうして書くことはないのですが、少しだけ。
 
 
 自分にとって家庭用ゲーム機というのは、SS/PS以前とそれ以降、という区切りがあります。それは自動車にたとえて言えばスカイラインGT−R(R32型)発売以降とそれ以前、みたいな感じで、って全然たとえがわからない? やっぱり(笑)。
 
 いわゆる『次世代ゲーム機』という言葉が初めて使われたのが、そのあたりじゃないかなと思うのですが、たぶんそのせい。だから私の中では、それ以前とそれ以降という区切りがあるのです。実際、初めてサターンやPSのゲームのオープニングムービーなどを見た時は、「おいおい、これって実写そのものじゃん!」とすさまじい衝撃を受けましたしね。
 
 そう考えるとこの『電忍アレスタ』が発売されたメガCDというハードは、『それ以前』のカテゴリにおける最高峰だったわけで、やっぱりウリとしてはアニメと声優がバリバリしゃべる、っていうところですよね。
 
 もちろん今からしてみれば、アニメといっても稚拙なものですが、日進月歩の勢いで進化する最新ハードの最新ゲームと比べること自体がナンセンスですよね。って、そんなことは私が言うまでもないのですが、さらに一歩進んで、当時のフィルターを通して見た時、それがどうだったのかっていうのが大切だと思うのです。
 
 そう考えた時、これがいいのかそうでもないのか。……それは「人によりけり」という言葉で逃げさせていただくことにして(苦笑)、リアルタイムに当時の空気を知っていることを差っぴいても、本作は結構いい出来であると思うのです。特に武田信玄の空中戦艦ステージ。結構わかりづらいところからさりげなく弾を撃って来るのは嫌な感じですが、バキバキパキューンパキューンパキューン(注・複数の固い砲台などが同時多発的に爆発した時の効果音です)と巨大な戦艦が爆発していくのは『雷電』などにも通じる爽快感です。
 
 今なお続く戦国ブーム。見目麗しい美少女が山ほど出るようなゲームがはびこるのだから、蒸気機関で空を飛ぶ汎用人型兵器が主人公のゲームなんてまだまだ硬派な方じゃないのかねぇ、と思いつつ下手に文章を締めくくることとしましょう。        

 


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