私と熱血激闘アクション――
 『アルゴスの戦士 はちゃめちゃ大進撃』論


 
 見た目は可愛く、中身は硬く
 
 
 ファミコンのゲームでは、パッケージのイメージイラストと中身に大きな隔たりがあることは珍しくないのですが、本作もそのひとつでしょうね。
 
 パッケージに描かれているのは『コミックボンボン』か何かで連載されていそうなマンガチックな少年。サブタイトルにもひらがなが入って、ますます『ボンボン』っぽい雰囲気です。
 
 ところがゲームのタイトルには『はちゃめちゃ大進撃』なるワードはありません。そしてゲームを始めると、そこに現れたのは通常の等身の戦士が夕日をバックにディスカーマーを振り回す超硬派アクションでした。
 まあ、最初は広告も超硬派・ヨーロピアンファンタジーな雰囲気だったみたいですけどね(参照1)。たぶん、これじゃあ小学生は食いつかないんじゃないの? という意見がテクモの中にあって、それでこのようなイラストになったのではないでしょうか。
 
 それがいいのか悪いのかはよくわかりませんが、ともかく中身はさすがテクモ。非常によくできたアクションゲームです。私は出会いからクリアまで25年ほどかかりましたが、すごく満足しました。

 
 闘神(インドラ)の化身(リバース)であることを教えてやろう
 
 
 主人公(名無しの超戦士)はヨーヨー状の武器『ディスカーマー』を駆使して魔物たちを次々と撃破していきます。
 
 この武器は射程は短いですが(パワーアップすると少しだけ長くなる)連射が効きます。連射パッドとかがあると、まさにインドラの化身のごとく魔物たちに打撃を与えることができます。ある程度パラメータをあげなければいけないところはありますが、ボス戦も猛連打で撃退することができます。
 
 パラメータは腕力(攻撃力)と胸力(防御力)があり、敵を倒すことでちょっとずつアップして行きます。また体力ゲージも同じように、たくさんの敵を倒すことで最大12個までアップします。
 
 このパラメータ上げが、本作でもっとも時間のかかる作業なんですよね。一応、とある場所(後述)に出てくる『巨重兵士バーガン』というキャラクタを倒すと破格のポイントが入るのですが、それにしても結構な時間がかかります。いったん上げてしまえば後は力ずくで突破することができるんですが、これ、できればパスワードとかが欲しかったな……(クリアまで3時間くらいかかった)。
 
 なお、このほかに『精神力』というパラメータがあります。これは敵を倒した時に時々出てくるアイテムを取ると少しずつたまっていくもので、ディスカーマーの射程範囲が伸びる『パワーアップ』、画面内の敵を全滅させる『せんしのきあい』、それに体力を全回復させるコマンドを利用することができます(必要な精神力はそれぞれ違います)。
 
 
 インドラの5つ道具
 
 
 そういうわけで体力・攻撃力などはプレイヤーの努力によってアップさせることができるのですが、それだけではこの広大な世界を駆け巡ることができません。ところどころにいるインドラから秘密道具(?)を与えてもらわなければならないのです。
 
 その1 「風の滑車」
 
 主にゲルロゼオで、島と島の間を行き来する時に使用。なかなか滑車がロープに引っかからず海に転落した戦士は4億人とも5億人とも言われています。
 
 その2 「炎のボーガン」
 
 杭はあるけどロープが張られていない場所にロープを張る道具。杭のあるところでボタンを押せばシャーッと伸びていくのですが、しっかり反対側に引っかかる前に移動すると海の藻屑になります(そんなのは私ぐらいかもしれませんが)。
 
 その3 「戦士の紋章」
 
 これをもっていると、一部の仙人が体力回復剤をプレゼントしてくれます。持たないで行っても「まだまだじゃのう」とつれない返事をされてしまいます。
 
 その4 「インドラのよろい」
 
 胸力アップの効率がよくなる。ただ、これを手に入れる頃には相当鍛えられているはずなので、あまり劇的な恩恵は感じられないような……もちろん、ないよりはあった方がいいですが。
 
 その5 「ペガサスの笛」
 
 ゲーム内で一度だけ利用する。とある場所に行くために必要。……そういうアイテムです。
 
 
 なおこれらのアイテムをとる前に、ゲルロゼオにいる仙人から『くさりガマ』をもらわなければいけません。これがないと、どこにもいけないので注意しましょう。

 
   これが聖地アルゴールだ!?


 ここで具体的にイラストでもあればわかりやすいんですが、私自身はそのあたりを上手に表現できないし、どこかから借りてくるわけにもいかないので、テキストで書かせていただきます。
 
 聖地アルゴールは大変に広いです。ナニナニ連峰だのナニナニの森だのといったものがたくさんあり(これらはサイドビュー面)、これらのステージをつなげる移動マップ(トップビュー面)が龍の哭く谷ゲルロゼオというところです。先ほど記載した5つ道具のうち『風の滑車』と『炎のボーガン』はこのステージ移動の際に必須となるので、サイドビュー面でそれぞれの道具を獲得してから進めていくことになります。
 
 正直なところ、攻略サイトを見ないと、どこでどうしたらいいのかわかりませんでした。ゲームそれ自体に触れたのはもう20年以上前ですが、実際にクリアしたのは2013年でしたからね。これもまた家庭用ならではの、長く遊べるようにという開発者様の配慮だと思うのですが、これを実機でやるのは大変ですよね。
 
 ・・・コンティニューは無限ですが、やたらと時間がかかるので、最終的にはエミュレータのクイックセーブ機能を使って攻略してしまったのです。これは本当に恥ずかしいことだと思うのですが、とにかくそういうことでした。
 
 
 一応、言い訳をさせていただきます。そんなインチキを利用してでもクリアしたかった理由は、ひとえにその高いアクション性と血がたぎるBGMを味わいたかったからです。
 
 最初のステージから、非常にかっこいいですよ。後ろには大きな夕日。そこでシュシュシュッとディスカーマーを振りかざして怪物たちを撃滅する主人公。そこで流れる音楽は、これから先の激闘を予感させるような雰囲気です。「この先どんな困難があろうと、おれはやってやるぜ!」そう言っているような感じです。
 
 後の『忍者龍剣伝』では、これにくわえて映画さながらのヴィジュアルも入りましたからね。非常に難しいながら、それでもやる気をかき立ててくれる・・・当時のテクモ様の気合をひしひしと感じる一本です。まさか、数年後には女性の胸の揺れを表現することに全精力を傾けるような会社になるとは・・・。
 
 
  攻略にあたって


 私自身が攻略サイトを全面的に頼ってクリアしたので、攻略云々といった話を私がする資格はないのですが、一応ちょっとだけ書かせていただきます。
 
 先ほど『高いアクション性』と書きましたが、その一方で結構、力ずくで進める場所もたくさんあります。たくさん敵を倒すことで経験値をため、攻撃力や体力をアップさせることができるのですが、ボス戦とかはそうやってパワーアップさせた後に鬼連射(出展:ゲームセンターCX)で一気呵成に撃滅することができます。そして、その経験値をたくさん稼げるのが、天空の島ラルピウスに出てくる『巨重兵士バーガン』です。
 
 説明書によると超電磁波を撃ってくるロボット兵士なんですが、さすがにメチャクチャ体力があります。そのためここに来たばかりの時はなかなか苦戦すると思いますが、倒した時の経験値もたっぷりですからね。しかも倒した後、すぐ後ろの扉に入って、また入り直すと復活しているので、ここで大量に経験値を稼ぐことができます。連射パッドがないと腱鞘炎になるかもしれませんが。
 
 
 あとはゲルロゼオで、なかなか滑車やボーガンが引っかからない時は、その周辺をうろうろしてみましょう。昔のゲームらしく、見た目以上にシビアな判定のようです。
 
 十分にパワーアップすれば、後は敵なしです。存分にアクションを堪能し、獣神・・・ではなく獣王ライガーを撃退しましょう。
 
 
  あの日の悔しさを胸に


 先ほど「アクション性と音楽」を味わいたくて、インチキを使ってでもクリアした、と書きましたが・・・実は、それだけではありません。
 
 最初にこのゲームに触れたのは、まだ小学校低学年のころ。当時は親父の実家に住んでいたいとこがファミコンを持っていたので、そっちに行った時に遊ばせてもらったのです。以前レビューを書いた『おにゃんこTOWN』と同じです。あ、あと『忍者龍剣伝』もそうでした。
 
 もっとも、当時は遊べる時間も短かったし、ゲームの腕前もショボショボでしたからね。ゲルロゼオまでも行けずにゲームオーバーになってしまいました。
 
 そして、そのゲームオーバーの画面が非常に怖かった思い出があるのです。・・・真っ暗な背景に血を連想させるような赤文字で『GAME OVER』と表示されるだけの画面。地獄の底から響いてくるような低音。突き放すような音楽の短さ。怪物たちに惨殺された後、地の底で朽ち果てていく自分自身を見下ろすようなイメージが脳裏によぎり、すっかりトラウマになってしまったのです。
 
 何もそんな・・・と思われるかもしれませんが、とにかくそのくらい怖かったのです。
 
 あれから四半世紀ほど時が流れ、『忍者龍剣伝』も何とかクリアしたし、今なら大丈夫でしょう! と思ったので今回取り組んだしだいです。それでもハンデとして『攻略サイトを見る』『連射パッドを使う』『クイックセーブを使う』というインチキを使わせてもらったわけですが、それでも、『ボス戦の直前にセーブしてミスしたらすぐやり直す』ということはしませんでした。やむをえずゲームを中断しなければいけない際に利用したくらいです。
 
 
 そういう環境でのクリアなので、誰に自慢できる話でもないですが、とにかく私にとっては大きな一歩でした。さすがにアポロの月着陸、コロンブスのアメリカ大陸発見、はたまたのび太くんが百点を取ったことには及びませんが、何とかクリアできてよかったです。

 


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