私と頼れる仲間たち――
 『悪魔城伝説』論


 
 二つの『最初』
 
 
 1989年に発売されたコナミのファミコンゲーム『悪魔城伝説』は、初代『悪魔城ドラキュラ』の100年ほど前の物語です。ベルモンド家とドラキュラ伯爵との戦いは、この物語が最初と言っていいでしょう。
 
 それと同時に、私にとってもこれは最初のドラキュラシリーズでした。一応、前作にあたる『ドラキュラII 呪いの封印』とかも家にはありましたが、あれはちょっと恐すぎ&難しすぎで、ほとんどプレイしたことがなかったのでね。ついでに言えばディスクシステムという特殊なハードでしか発売されていなかったので、友達の家でワイワイ言いながら遊んだのは、この『悪魔城伝説』が最初でした。
 
 そういうわけで思いいれはたっぷりあるのですが、そのアクション性の高さは2014年現在でも全然見劣りしません。今回レビューを書くために改めてプレイして、そのことを強く感じました。
 
 
 闇に生きるものたち
 
 
 物語は15世紀、トランシルヴァニア地方を治める領主ヴラド・ツェペシュ公が暗黒邪神崇拝を復活させ、邪神の力を借りてヨーロッパ全土を手中に収めるべく動き出したことから始まります。
 
 これに対し東方正教会はヴラド公改め『ドラキュラ』討伐のため多くの戦士を派遣したものの、ひとりとして帰ってくる者はいませんでした。その中には凄腕のヴァンパイア・ハンターとして知られた修道士『サイファ・ヴェルナンデス』もいましたが、やはり消息を絶ってしまいました。
 
 そのため最後の手段として、ベルモンド家の者に依頼をすることにした東方正教会。この頃すでにベルモンドの名前は知れ渡っていましたが、それは魔物と同じような存在として恐れられ、忌み嫌われているということでもありました。そういう人に依頼しなきゃいけないくらい切羽詰っていたって言うことですね。
 
 すでに人前からは姿を消していたベルモンド家の者たち。八方手を尽くしてやっと探し当てたその男の名は『ラルフ・ベルモンド』‥‥先祖伝来の鞭を手に、魔物たちを倒す戦いが今、始まったのです。
 
 基本的にはAボタンでジャンプ、Bボタンで攻撃。上を押しながらBボタンでサブウエポンを繰り出すという、いつものパターンです。サブウエポンは短剣、斧、聖水、十字架、時計などがあります。
 
 ラルフの特徴は基本武器のバランスのよさでしょうか。そこそこ連射も効くし攻撃力も(パワーアップすれば)十分に信頼の置けるレベルですし、何よりもリーチの長さがいいですよね。相手の攻撃が届かないところからビシッビシッと打ち込むもよし、ダメージ覚悟で一気に叩くもよし。なんだかんだで結構スタンダードな感じです。
 
 あとはサブウエポンの豊富さも特徴ですね。特に、地面に落ちてしばらく攻撃判定が残る『聖水』やブーメランのように行ったり来たりする『十字架』は、使いこなせば非常に強力な武器となります。このあたりを工夫するのが本作の楽しみですね。
 
 なお、本作でのスタート地点は町外れの教会です。そもそも城に行くまでに、結構な苦労をしなければいけないんです。ルート選択によって長くなったり短くなったりするので、自分に合ったルートを探してみましょう。なお最短は時計台をスルーして幽霊船で直接乗りつけるパターンです。
 
 
 仲間を頼れ
 
 
 本作の最大の特徴といえば、やはり仲間システムでしょう。主人公ラルフのほかに、何人か一緒に戦ってくれる仲間がいるのです。・・・一応、仲間を連れずひとりでクリアすることも可能らしいですが、まあせっかくなので連れて行きましょう。
 
 仲間その1 「グラント・ダナスティ」
 
 時計台の頂上にいる巨大猿の正体。倒すと呪いが解けて元の人間の姿になる。ラルフよりもずいぶんと小柄で、ジャンプ力に優れ、壁に張り付いて移動することが出来るのが特徴。また基本武器が短剣なのも状況によっては非常に強力です(攻撃力自体はあまり高くない)。
 
 具体的にどういった経歴なのかは不明ですが、ともかく仲間も親兄弟もみんな殺されてしまい、「頼む、おれも連れて行ってくれよ!」と訴えかけてくるので、連れて行ってあげましょう。面倒なギミックを思い切りショートカットできるので道中はかなり楽です。
 
 仲間その2 「サイファ・ヴェルナンデス」
 
 某所で危なく石像にされて封じ込められるところだったヴァンパイアハンター。白いローブを身にまとった魔法使いのような姿です。「もしも私の力が必要なら、一緒に行ってあげてもいいですけど?」といった口調で話しかけてくるので、あまり人に心を開かない性格なのかもしれません(?)。
 
 通常攻撃のリーチはもっとも短いですが、その代わり連射が効くので状況によっては結構強いです。ただ、サブウエポンのアイテムを取ると見た目通り魔法を使います。そしてこの魔法が超絶的に強いです。威力もそこそこあるしホーミング性能もある『雷の魔法』、某漫画の『アイスエイジ』よろしく敵キャラも水路も一定時間凍らせる『氷の魔法』そしてリーチに限りはあるもののゲーム内で最強の威力を誇る『炎の魔法』。ボス戦がほかの野郎どもに対して格段に楽になるので、実は一番クリアしやすいパートナーかもしれません。
 
 仲間その3 「アルカード」
 
 地下墓地に眠るヴァンパイア。コウモリに変身したりマントの中から火の玉を出したりと、伯爵様そっくりの攻撃を繰り出してくるものの、倒すと「お前のような人間を待っていたのだ」とか言って、しれーと仲間になろうとする謎の男。……数年後に主役格に躍り出ますが、この時点ではまだね。
 
 基本攻撃は、敵キャラとして出てきた時と同じく、マントの中から飛ばす火の玉。リーチ、弾速ともに「まずまず」で威力は低いです。メデューサヘッドも一撃では倒せません。一応パワーアップアイテムを取ると2Way→3Wayと進化しますが、それでもちょっとね。あと階段にいる時は攻撃できません。
 
 特殊能力としては、コウモリに変身することが出来ます。結構なペースでハートを消費するのですが、コウモリなので画面内を自由自在に飛び回ることが出来ます。要所要所で使えば、グラントよりもさらに直接的なショートカットが可能です。確か「ゲームセンターCX」で有野課長がやってましたよね。
 
 
 真摯な気持ちで
 
 
 アクションゲームとしては、結構難しい部類に入ると思います。一発死のギミックも多数ありますし、いわゆる『ギリジャン』で行かなくちゃいけない場面もあります。ボス戦なんかは(サイファはともかく)ちゃんとパターンを見つけていかないと、なかなか勝てないでしょう。
 
 それでもファミコンのゲームらしく、キチキチと相手のパターンを見極めれば何とかなる難易度です。『魔界村』はどうにもなりませんでしたが、『悪魔城伝説』は何とかなります。まったくもって個人的な話なんですが、そういうことなんです。
 
 そうやって、あえてラルフで苦労しながらビシッビシッと進むもよし、ほかの仲間の力を借りてラクをするもよし。なんだかんだで結局3回クリアして3通りエンディングを見ましたし、とりあえず攻略成功と言っていいでしょう。やりましたー!(いつもの効果音)
 
 
 

 おまけ:それぞれの行く末(エンディングについて・ネタバレ注意)
 
 
 最終ボスを倒した後のエンディングでは、後に定番化する「崩壊する悪魔城を遠くから眺める」ラルフと仲間のアニメーションをはさみ、エピローグが語られます。自力で見たい方はこの先はご覧にならないでください。
 
 
 
 まずはグラント。仲間たちの敵を自らの手で取った彼は、街に戻ると復興のために頑張る人々のリーダーとして活躍したそうです。身体は小さいけど心は広い、いわば羽柴秀吉みたいな人物として頑張ったんじゃないかなと思います。
 
 次にサイファ。……ゲーム中では特にそういった場面が出てこなかったので私も語りませんでしたが、実は女性でした。そしてヴァンパイアハンターとして苛烈な日々を過ごして来たことも、エンディングで明らかになりました(コレは本当に知らなかった)。しかしながらラルフと出会い、さらにドラキュラ伯爵を撃滅することで初めて心の安らぎを覚え、後に100年200年と続くベルモンド家の系譜をつむぐパートナーとなったのだそうです。
 
 そしてアルカードですが、これは少々暗い感じでした。いくら悪魔に魂を売ったとはいえ、実の父親を手にかけてしまったことは軽くありません。ラルフもそのことと、これから先の彼の厳しい行く末を思うと、何も言えませんでした。たぶん無口無愛想な超耽美系キャラとして再登場したのも、そういった理由からでしょう。
 
    

 


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